ボーイング787の導入で何が変わったのか?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
日本から未就航だった都市へ、新規路線の開設ラッシュが続いている。その立役者として活躍するのが、ボーイング787だ。“ドリームライナー”の愛称を持つ787は、何を実現したのか?
メキシコシティからもダイレクト運航に
海外でももちろん、787を路線計画の中心に据えるエアラインは少なくない。米国のユナイテッド航空も、787を積極活用してきた1社だ。2013年6月には、787で成田からコロラド州デンバーへの直行便を開設(関連記事)。デンバーへの直行便はアジアでは初であり、米国中西部の旅の可能性を大きく広げている。
上質なサービスで定評のある中東のカタール航空も、787を活用することで拠点であるドーハからのネットワーク拡大に弾みをつけている。日本へも関西と成田に続き、2014年6月にはドーハから羽田線への新規路線を開設。ビジネス需要も旺盛な重要路線として、羽田線の運航機材には快適な機内環境を提供できる787が選ばれた。
「毎回のフライトで売り上げの3割が燃料費に消えてしまう」と言われるのがエアラインビジネスであり、同サイズの旧型機に比べて20%も燃費を改善した787の経済性の高さはLCC(ローコストキャリア)にとっても魅力である。そのメリットは飛行距離が延びるほど生かせることから、豪州を拠点に中長距離路線を運航するジェットスター航空では787の積極活用をスタート。シンガポールを拠点にLCCでは珍しく400席クラスのボーイング777-200のみで運航を続けてきたスクートも、現在は全機を787に切り替える作業が進んでいる。
日本からの最長路線として知られるのが、成田/メキシコシティ線だ。この路線にアエロメヒコ航空も787を投入している。ただし直行便は成田発の往路のみ。復路のメキシコシティ発はモンテレイ経由での運航だった。メキシコシティは標高2000メートルを超える空気の薄い高地にあり、燃料を満タンにしての離陸が難しいための措置である。しかし2016年1月からは、787の航続距離性能を生かし、復路もダイレクト運航にすることが決定している。787は中米やカリブへの旅をぐっと身近なものにしてくれそうだ。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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