中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。
中国共産党は「くまのプーさん」を削除
これを見ると、当局が敏感になっている事象に絡む言葉が削除対象になっているのが分かる。
では2015年、中国共産党はどんなポストをもっとも「検閲」したのか。
1位に輝いたのは、オープンカーにくまのプーさんが乗るかわいらしいプラスチック製おもちゃの写真と、それに添えられた言葉「分享图片(写真をシェアします、の意味)」だった。アップから1時間ちょっとで削除されるまでに、6万5576回シェアされた。これは1秒間に15回シェアされたことを意味する。
クルマに乗ったプーさんの写真がなぜ検閲の対象になったのかというと、実は、中国では習近平国家主席は「くまのプーさん」に似ているとバカにされているからだ。そもそもは2013年6月の訪米でバラク・オバマ米大統領とカリフォルニア州で一緒に散歩している恰幅のいい習の写真が「プーさん」に見えると揶揄(やゆ)され、「プーさん」の写真と並んでウェイボーでアップされた。するとすぐに検閲で削除されたため、当時、世界中のメディアで大きな話題になった(参照リンク)。
それ以降、「プーさん」は習国家主席を揶揄するものとして定着している。しかも読者の皆さんも記憶にあるかもしれないが、2015年の軍事パレードで習は、クルマの屋根から上半身を外に出して立つ姿での登場だった。それに似せて、パレードの行われた9月3日に、プーさんがクルマに上半身を出して乗っているおもちゃの写真がアップされたのだ。2013年に続き2015年もすぐに削除されたことから、「プーさん」は中国共産党にとって放置できない「タブー」になっているのかもしれない。
2位は、8月に起きた天津市の爆発事故についてのポスト。少なくとも173人の死者を出した大規模爆発は政治家や警察を巡る癒着や役人の職権乱用が背景にあるとして大きな批判が噴出した。そこで「(被害者に)祈りを捧げるのでなく責任を問え」と憤る発言が9月13日にアップされたが、直ちに削除された。6万3669回シェアされ、約2時間半後に削除されるまで1秒間に6回シェアされた。さらに「爆発」「噂」といった単語も事故から7日間にわたり検閲された。
また3位は天津の事故からすぐ後に、遼寧省鞍山でも小規模な爆破と火事が起き、「鞍山で救助を待つ人はすぐにポストをしろ」と発言されたポスト。だが火事はすぐに消し止められ、4万5000回シェアされたこのポストはすぐに削除された。4位は役人の腐敗をネットで告発してきた男性がハニートラップによる売春容疑で拘束された一件についてだ。この男性が「売春婦を買ったことを否定する」と発言したことが4月2日にシェアされたが、すぐに削除された。
ちなみに検閲トップ20のうち、4つは習にからんだポストだった。
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