タレントマネジメントを実践する企業の実情(2/6 ページ)
タレントマネジメントを導入する企業が増えつつあるが、具体的にどのように活用しているのか。インテリジェンスHITO総合研究所の渕田任隆氏に話を聞いた。
グローバル企業の例:異なる2つのタレントマネジメント
――これまで(前編)のお話を踏まえて、タレントマネジメントを実践している企業の例を教えてください。
渕田氏: グローバルで優秀な人材を発掘・育成していくというタレントマネジメントの例では、日産自動車(以下、日産)が挙げられます。日産は、カルロス・ゴーン氏が社長に就任してから人材マネジメントに力を注いでいて、2011年には「グローバルタレントマネジメント部」という部署を創設しています。そこでは、ビジネスリーダーの発掘・育成を目的としていて、社内で優秀な人材を発掘するスカウトのような役割を担う「キャリアコーチ」と呼ばれる人物が、各部署の上司からのレポートを元にビジネスリーダーの候補となる人材を探し出して、経営トップ層による委員会に提案します。
そこで評価されてビジネスリーダー候補に認められると、ハイポテンシャルパーソン(HPP)として登録され、キャリアコーチ、上司が個人ごとの育成プランを作り、さまざまなポストを経験しながら人材の成長を進めていくのです。こうしたHPPは当初40代が中心でしたが、最近では20代、30代にまで拡大していき、若い段階から企業のトップ層を担える優秀な人材の発掘・育成に力を入れています。
――社内にリーダー育成専門の部門が存在しているというのは、興味深いですね。人材を育てること自体が業績向上につながるという発想は、今の日本企業にはなかなかないと思います。
渕田氏: 一部の日本企業では「人材育成」に対して評価がされていないというのは確かにあると思います。上司は現場でチームを使って数値目標を達成することにエネルギーを費やしていて、部下を育成すればチームの業績が伸びるのに、その育成にはあまり目が向けられていないのです。
加えて、優秀な人材がいれば、チームの業績アップのために外に出したくないという思惑も生まれてしまいます。しかし、日産などの企業では「人材は企業の財産だ」という考えが強く、その人材をどう育て、活用していくかというテーマのもと、人事部門主導で人事異動などの計画を立てているケースがあります。人材の7割は業務経験で成長する。すると、同じ部署で長い期間同じ仕事に従事させるのは、成長につながらないのです。
日本の人事制度のいいところは、ジョブローテーションがあるところだと思っています。会社が強制的に環境を変えることでゼロからノウハウの蓄積を促すことができ、人材が育つ。環境適応能力も育まれる。とても良い制度だと思います。しかし、そのジョブローテーションをただ漫然とやるのではなく、人材の成長を考えて計画性を持って行っていくことが重要ではないかと思います。
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