タレントマネジメントを実践する企業の実情(3/6 ページ)
タレントマネジメントを導入する企業が増えつつあるが、具体的にどのように活用しているのか。インテリジェンスHITO総合研究所の渕田任隆氏に話を聞いた。
優秀な人材をこれまで以上に多く輩出する仕組みとして
――そのほかのケースではいかがでしょうか。
渕田氏: 同じグローバル企業でも、日立製作所(以下、日立)の例は少し内容が違います。日立にはインフラ、ヘルスケア、情報・通信システムなどグローバルで事業が非常に多岐に渡り、さらに成長しなければならないという目標があります。しかし、こうした多岐に渡る事業のトップ、海外現地法人のトップを担う人材を育成するためには、質的にも量的にも今のままではカバーできないという危機感のもと、優秀な人材をこれまで以上に多く輩出する仕組みとして、タレントマネジメントを導入しました。
課題としては、全世界に30万人以上いると言われている日立の社員について、どのような人材がどこにいるのかが日本のヘッドクオーターから見えていなかったそうです。そうした状況で、リーダーとなる人材の量と質を確保することは難しい。そこで、多くの社員の人材情報をデータベース化し、リーダーを同じプラットフォームの上で育成していくために、パフォーマンス・マネジメント、グレードを共通化したのです。日立は5年程度の短期間にさまざまな施策を打ち、リクルーティングを行う人材エージェントもグローバルに統一しました。
また日立は「仕組みを作っただけで人が育つわけではない」という考えを強く持っています。人材を育てるためには「リーダーを意図的に育成していこう」という強い意識がなければならず、その育成責任は人事部門ではなく現場の上司であるという考えがあるのです。また、日本の企業には人材育成の「型」がありませんが、日立ではこの「型」を7つ作り、研修などに取り入れているそうです。さらに、人事部門の改革も進めていて、海外からもスタッフを入れて部署内に視点や考え方の転換を促し、スピード感も変えています。
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