ハーバード大から学ぶ、15歳になったWikipediaとの付き合い方:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
2016年1月15日、「Wikipedia」が“誕生日”を迎えた。情報の正確性がずっと議論されているが、同サイトを世界はどう見ているのか。
Wikipediaは信用に価するのか
ここまでWikipediaの賛否を見てきたが、結局のところ、同サイトは信用に価するのか。その“付き合い方”は、米ハーバード大学が学生たちに伝えているアドバイスが適切だと思うので、結論としてここに記しておきたい(ちなみに米国のトップレベルの大学でも今、授業を受けながら補助的にノートPCでWikipediaを見ているような学生は少なくない)。
「急ぎで情報が欲しいならWikipediaほど便利なものはない……それでもやはり、研究や論文などとなると話は違う。非常に注意深く扱わなければいけない。同サイトの注意書きにあるように、記事を書いている人は、あくまで書きたい人であって、書く人の専門性は問われない……意図的に偏った情報が出ていることもあるし、情報が古かったり、専門ではない人が執筆していることもある。Wikipediaの正しい使い方は、基本的な参考として読む程度にしておいたほうがいい」
日本語版になれば翻訳も介在するため、さらに情報が正確に伝わらないケースも出てくるかもしれない。多くの人々の手によって、誕生から15年にわたり作り上げられてきたWikipediaだが、今のところ、準備的な情報として付き合うことが賢明だということだろう。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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