ハーバード大から学ぶ、15歳になったWikipediaとの付き合い方:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
2016年1月15日、「Wikipedia」が“誕生日”を迎えた。情報の正確性がずっと議論されているが、同サイトを世界はどう見ているのか。
記事の正確性が取りざたされている
オーストラリアやカナダ、ポルトガルは政府が修正を行っていたという話も指摘されているし、英BBCによれば、CIA(米中央情報局)の職員とみられる人物が、当時イランの大統領だったマフムード・アフマディネジャドの記事に修正を加えていたことが判明している。またバチカン法王庁のIPアドレスを使った人物が、アイルランド人政治家のページで恣意的な修正をした形跡も報じられている。もちろん他の宗教団体も同様の疑惑が報じられている。
基本的にWikipediaは、世界の人々の良心と、公共財を尊重するという意識に頼っているだけに、政治や国際情勢というせめぎ合いの中ではどうしても中立性に横槍が入ってしまう、ということだろう。
また大手メディア関係者も改ざんに関与している。ニューヨークタイムズ紙の関係者は、ジョージ・W・ブッシュ大統領のエントリー内に、「愚か者」という単語をあちこちに12個も散りばめて書き加えていた。またワシントンポスト紙の関係者が同紙のオーナーのリンク先を有名な大量殺人鬼のページに変更していたとして以前話題になったことがある。
最近では英国で2014年、1989年に起きた「ヒルズボロの悲劇」と呼ばれるサッカーの試合で起きた観客圧死事件のエントリーに、公務員の男性が誹謗(ひぼう)中傷の修正を加えていたことがIPアドレスから判明し、解雇される騒動が起きている。
こうした出来事から記事の正確性が取りざたされ、いつまでも一部から懐疑的な目で見られているのである。
またこうした問題だけでなく、Wikipediaにはさらに大きな視野で考えなければいけない課題があるとの声もある。どういう問題かというと、Wikipediaの修正を行う人たちがほとんど北半球の先進国に暮らす人たちであること。また編集をするのは男性が多いという事実。またそもそも修正できる人がインターネットにある程度詳しくないといけないため、知識を提供する人が自ずと限定されること、などだ。こうした事実によって、記事そのものにバイアスがかかっているということらしい。
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