ハーバード大から学ぶ、15歳になったWikipediaとの付き合い方:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
2016年1月15日、「Wikipedia」が“誕生日”を迎えた。情報の正確性がずっと議論されているが、同サイトを世界はどう見ているのか。
海外で検索されている言葉
この検索語データは、世界的にみるとさらに興味深い。英語圏版とドイツ語版の1位は「2015年の死者」で、どんな人が他界したのかをリストした記事だった。またフランス語版とポルトガル語版では、日本の漫画である「NARUTO(ナルト)」が、ともに3位にランクしている。中国語版では、「日本」が検索の9位に入っている。それぞれの国の今が見事に垣間見られるのだ。
海外に行っても、やはりWikipediaを使う人は多い。アカデミックな世界でも、若い人ほどサクッとWikipediaにアクセスする人が少なくない。
最近では信頼度も上がっているように感じる。Wikipediaを過去6年にわたって研究している英リーズ大学のヘザー・フォード教授は2016年1月、こんなコメントをしている。Wikipediaの興隆を見て、「自分が、かなり静かなクーデターを目撃していることに気がついた。(Wikipediaによって)伝統的な権威ある情報源がその地位を奪われるというクーデターだ」
また少し前になるが、2005年には英科学誌ネイチャーが、一般的に正確で信頼がおけると認識されているブリタニカ百科事典とWikipediaを比較する実験を行っている。いくつもの項目を両百科事典から抜き出して比較を行ったのだが、正確さにおいて、両者には大した差がないことが判明した。この結果にWikipediaの創始者であるジミー・ウェールズはたいそう喜び、Wikipediaの記事(Wikipediaの信頼性)に、この結果を掲載しているほどだ。
ただそれでも、Wikipediaの正確性をどれだけ信頼していいのか分からないという人もいる。というのも、記事に間違いが含まれていると指摘する声があるからだ。例えば2万近くある医療系記事のうち90%に何らかの間違いが含まれているという報道がなされたこともある(これについては、サイト本来の目的が間違いを皆で直しながら公共財として共有するということなので間違いを正せば済むのだが、確たるソースを示す必要があるなど修正もそう簡単ではない)。
また基本的に誰でも記事内容の変更に関与できるというサイトの性質上、これまでも恣意的な修正などトラブルが起きている。当事者だけでなく、企業や政府のスピン(情報操作)担当者らが自分たちに都合のいいように記事を修正・改ざんするケースは少なくないのだ。
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