「ガソリンが下落すれば、回転ずし屋の客が増える」は本当か:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
「ガソリン下落 回転ずしが恩恵」というニュースがあった。ガソリン価格が大幅に値下がりしたことで、駐車場付の郊外型回転ずしチェーン店へマイカーで出掛けるファミリー層などが増えているという。「風が吹けば、桶屋が儲かる」といった話だが、本当にそうなのか。
回転ずし業界の成長要因
例えば、記事で紹介されているグラフは、ガソリン価格の下落がスタートした昨年6月から始まっている。この期間だけを分析すると、確かに客数の伸びとガソリン価格はきれいにシンクロしているのだが、視野を広げるとやや違った構図がみえてくる。
この3年のガソリン価格の推移を見てみると、2014年7月にリッター160円超まで上昇したのを高値としてそこから下落し2015年2月の130円台まで落ち込んでいる。
これを「ガソリンが下落すれば、回転ずし屋の客が増える」理論に照らし合わせれば、2014年7月を境に記事中のグラフのように、前年同月比客数も右肩上がりになっていなければいけないところだが、現実はそうなっていない。
9月にガクンと落ち込むと、翌10月にはここ数年で最高の伸び率を見せる。かといってその翌月には再び落ち込むという乱高下を繰り返しているのだ。2014年7月の高値時から2割ほどお得になった2015年2月〜3月には前年同月比95%のラインをも下回っている。
つまり、くら寿司に限っていえば、客数の伸びとガソリン価格がシンクロしているのは昨年6月から今年1月までであって、両者の動きはさほど連動していないという見方もできるのだ。
なんてことを言うと、記事にイチャモンをつけているように聞こえるかもしれないが、先ほども申し上げたとおり、回転ずし業界の活況に、ガソリン価格が影響を及ぼしていることを否定するつもりは毛頭ない。
ただ、くら寿司の好調さを説明するのに、すべてをガソリン価格にもっていくのは無理があるということが言いたいのだ。
関連記事
- ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - ココイチのカツ横流し事件、産廃業者の「ひとりでやった」が信用できない理由
ココイチの「カツ横流し事件」が世間を騒がせている。今回の不正は、産廃業者ダイコーによる“単独犯”ということになっているが、筆者の窪田氏は「『ひとりでやった』というのは信じられない」と指摘している。なぜなら……。 - なぜ「ココイチ」の味は“普通”なのに、トップを独走しているのか
「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)を運営している壱番屋の業績が好調である。市場をみると、ココイチの店舗数は1000店を超えているのに、2位のゴーゴーカレーは80店ほど。なぜココイチはここまで「独走」しているのか。同社の取締役に聞いたところ……。 - 「SMAPは友情と打算の二重構造」と感じる、これだけの理由
日本中がザワザワした「SMAP解散騒動」がようやく落ち着こうとしている。一連の動きを振り返って、筆者の窪田氏が最も印象に残ったのは「情報戦」だという。その理由は……。 - ベッキーの謝罪会見は、なぜ「質問禁止」だったのか
人気タレントのベッキーに、初スキャンダルが発覚した。所属事務所内でベッキーは緊急会見を開いたものの、メディアからの「質問」は一切受け付けなかった。果たしてこの戦略は“正しかった”のか、それとも……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.