フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由:世界を読み解くニュース・サロン(4/6 ページ)
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。
フランスの取り組みは参考になるのか
だが先に述べた通り、そもそもこの法律が可決された背景には貧困問題があり、貧困問題を解決するために食品ロスを活用しようとする試みだった。フランスでは最近、無職の人々やホームレス、貧乏学生などがスーパーのゴミ箱から破棄された食品を漁って生活している実態が報じられたり、ゴミ箱を漁って窃盗罪で捕まった人のニュースもあった。ちなみにフランスでは、失業率が10.6%に達し、若者にいたっては26%にもなる。欧州加盟国の中でも失業率は高い部類に入る。
そんな状況を見かねたフランス・クールブボアの地方議員アラシュ・デアランバルシュ氏が、2015年1月に反貧困の草の根運動として、オンライン署名サイトで活動を開始。賞味期限切れ食品の廃棄禁止を訴えるキャンペーンを始めたのだ。そしてすぐに21万人以上の署名を得たことで勢いづき、デアランバルシュ氏は国会議員にも働きかけを行った。そして5月には下院が廃棄禁止の法案を一旦可決するに至った、という経緯がある。
草の根運動から法律を成立させた張本人のデアランバルシュ氏は、「私たちは毎日100人ほどを助けていた。そのうちの半数は何人もの子どもを抱えたシングルマザーや年金受給者、さらには低賃金の行政職員。残りの半分はシェルターやストリートで暮らす人たちだった」とメディアの取材に活動の動機を語っている。
そしてこの食品廃棄を禁止する法案は2015年5月に一度下院を通過したが、手続きなどの問題で一旦無効に。しかし12月に再び下院で可決され、2016年2月には上院も通って成立した。
こうしたフランスの状況を踏まえると、結局のところ、フランスの取り組みは日本にとって参考になるのか。単刀直入に言って、日本でも試してみる価値があるのではないだろうか。
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