フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由:世界を読み解くニュース・サロン(5/6 ページ)
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。
「もったいない」ために廃棄食品を減らす
日本の場合、食品ロスは年間最大で800万トンで、世界でも屈指の廃棄量である。もちろん日本も、食品ロスを減らす努力をこれまでも行ってきている。食品廃棄の発生抑制に向けた目標値を設置したり、コンビニなどから出た食品などを動物の餌に回すといったことも行なわれているし、食品ロスの半数は家庭から出ているため、無駄を減らす啓蒙活動も地味だが行なわれている。
また日本の商習慣で食品ロスの原因の1つだと言われる「3分の1ルール(納入期限を製造日から3分の1の時点までとし、販売期限は賞味期限の3分の2の時点までを限度にし、最後の3分の1の期間は値引き販売か廃棄とするというルール)」も緩和する取り組みが始まっている。
こう見ると分かる通り、日本の場合は、フランスのように貧困層に還元することで食料廃棄問題に対処するのではなく、あくまで「もったいない」ために廃棄食品を減らす取り組みが主流になっている。貧困問題に活用しようなどという意識はない。
だが最近よく取り上げられている通り、貧困の問題は日本にとっても決して他人事ではない。OECD(経済協力開発機構)の加盟国34カ国で比べると、日本は11番目に貧困率が高い。また最近よく聞くが、17歳までの子どもの6人に1人は貧困にあるという。しかも217万人近くが生活保護を受けている。
もちろん1人当たりの国内総生産(GDP)が高いことから、日本は外国よりも裕福であるとの声もある。だが、喉から手が出るほど支援が欲しいと感じている人も少なからずいる。現在、日本でも全国11カ所にあるフードバンクやNPO団体が、まだ食べられるのに廃棄処分になっている食品を有効活用すべく取り組んでいるが、こうした活動もあまり知られておらず、まだ劇的な成果は聞こえてこない。
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