「決して安くない」のに、なぜ成城石井で買ってしまうのか?:ノッている会社は、ここまでやっている!(4/7 ページ)
総合スーパーが苦戦している中で、業績好調の企業がある。都市部を中心に展開する成城石井だ。店内には珍しい商品がズラリと並んでいるが、なぜそのような品ぞろえができるのか。『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』の著者・上阪徹氏によると……。
目利きの力が求められた
こうしておいしいワインの輸入を実現すると、次に求められたのが「ワインに合わせるもの」だった。例えば、チーズ。
当時、日本でチーズといえば、プロセスチーズが当たり前だったが、ここから今や成城石井の人気商品にもなっている輸入チーズの取り扱いが始まる。さらに、海外のチョコレートは日本で売られているものとはひと味違うよ、オリーブオイルというのが欧州では人気だよ、スペインやイタリアにおいしい生ハムがあるよ、と次々に顧客の声を捉え、輸入品のカテゴリーがどんどん広まっていった。
興味深いのは、儲(もう)けよう、という発想ではなかったこと。顧客が望むもの、満足するものをとことん突き詰めよう、というところから商品を考えたのだ。それが結果として、他社が真似できない品ぞろえにつながっていったのである。
こうした考え方は、輸入品に限らなかった。肉、魚、野菜の生鮮三品も同様だ。厳しい目を持つ成城の顧客に代わり、成城石井には目利きの力が求められた。
成城石井の精肉売場では、色鮮やかな高級肉が並ぶ。お値段もそれなりに張る。牛肉は、肉付け等級でA5かA4の最上級クラスを中心に専門のバイヤーが仕入れる。だが、等級だけでは判断しない。常にバイヤーは自分の目でチェックすることを基本にしている。求められているのは、本当においしいもの。ただ等級が上のものではないのだ。
しかも店舗では肉の知識を持つ担当者がいて、牛肉は熟成させ一番の食べ頃の状態で、豚肉や鶏肉は筋や脂を適切に処理して、それぞれ提供するという。本を書くにあたり、成城在住の主婦の声も聞いたが、こんな話があった。
「成城石井で一度お肉を買うと、もう他では買えない。子どもが食べてくれない」
生産者の顔が見える商品を数多く仕入れ、肉を熟知した専任者が扱って提供しているのが、成城石井。だから、こんな声が聞こえてくるのである。
野菜や魚も、同じように徹底的にこだわった仕入れをしている。もちろん仲介業者や市場も使うが、供給が見込めれば産地から直接送られた、こだわりの野菜が売り場に並ぶ。春先なら、霜降り白菜や深谷ネギを毎年、楽しみに待っている顧客も多い。生産者と直接コミュニケーションし、一番いい畑でとれた一番いいものを指定して仕入れている。
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