「決して安くない」のに、なぜ成城石井で買ってしまうのか?:ノッている会社は、ここまでやっている!(5/7 ページ)
総合スーパーが苦戦している中で、業績好調の企業がある。都市部を中心に展開する成城石井だ。店内には珍しい商品がズラリと並んでいるが、なぜそのような品ぞろえができるのか。『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』の著者・上阪徹氏によると……。
成城石井はここまでやる
魚もこだわりは徹底している。春先から出てくるホタルイカは原則として富山湾のものしか買わない。秋のサンマは主に北海道の厚岸。鮮度を重視し、飛行機で運ばれるサンマは、尻尾の部分から手で握ると上にしっかり立つという。値段は標準の2倍から3倍。それでも飛ぶように売れていく。
そしてもうひとつ、品ぞろえで他のスーパーとの違いが、売り場で大きな存在感を誇っている総菜だ。成城石井で総菜コーナーを眺めてみると、一般的なスーパーやコンビニとの圧倒的な違いにすぐに気付かされる。売られているものがまるで違うからだ。例えば、揚げ物がほとんどない。
一般的なスーパーでは、バックヤードで総菜の準備がされることが多い。製造は基本的に外注され、パート担当者が簡単に加工し、店頭に出しやすい商品開発が行われている。だから、開封して盛りつけるだけ、冷凍品をレンジで温めるだけ、揚げるだけ、が基本メニューになる。
だが、成城石井では、一部の大型店を除き、バックヤードで調理や加工はしない。自社の食品工場「セントラルキッチン」が、総菜のほとんどを作っているのだ。総勢で400人ほどが働くセントラルキッチンも取材で訪れた。総菜やハム、ソーセージ、パン、デザートが製造されている現場を見せてもらった。
驚いたのは、総菜開発の中心を担っていたのが、元有名ホテルや有名レストラン、和食店などで働いていたプロの料理人であること。言ってみれば、一流の料理人がスーパーの総菜を作っているのが、成城石井なのだ。
さらに驚かされたのは、ほとんどが本当に手作りされていたこと。10個ほど並ぶ大鍋のひとつでヘラ状の調理器具を回していたのは、メニューの開発者本人だった。自分で作るのだ。メニューはどんどん変わっていく多品種少量生産が基本のため、大きな機械はない。「作れるもの」を作るのではなく、「作りたいもの」を作るのだ。
そして機械を入れないもうひとつの理由は、味へのこだわり。そのほうがおいしいとわかっているから。驚いたのは、人気のポテトサラダを作るプロセスだった。ジャガイモは蒸してから手で皮を剥くのだ。
多くの食品工場では、ジャガイモの皮を一瞬でむいてくれる機械が使われているが、成城石井はやらない。なぜなら、ジャガイモは皮の真下が一番おいしいから。機械ではそれを削ってしまうから。しかし1日500〜600キロ、2500個ものジャガイモだ。そのすべてが、なんと手むきされていたのである。成城石井はここまでやるのだ。
関連記事
- 人工知能と外国人に、私たちの仕事は奪われてしまうのか
人工知能によって、自分の仕事が奪われるかもしれない――。そんな不安を感じたことがある人も多いと思うが、実際のところどうなのか。このテーマを調査した、野村総合研究所の担当者に話を聞いた。 - 競合店ができても、ドトールの売り上げがあっさり元に戻るワケ
コーヒー業界が熾烈な競争を極めている。喫茶店、ファミリーレストラン、コーヒーチェーン、コンビニ、サードウェーブなど、さまざまな業界が参入しているが、そんな中で堅調な売り上げを伸ばしているコーヒーチェーンがある。ドトールだ。 - おでんの「大根」が一番おいしいのは? ローソンがとにかく面白い
消費構造の変化、情報化の進展、かつてないグローバル化……。ますますビジネスが難しさを増す中、ユーザーから変わらぬ高い支持を得ている企業は一体何をしているのか。5社の取り組みを紹介する。第1回はローソン。 - テレビは苦戦しているのに、なぜWOWOWは過去最高なのか
テレビ局の厳しい戦いが続いている。視聴率が低迷し、広告費が落ち込む……。そんな状況の中で、有料放送「WOWOW」が好調だ。加入件数は過去最高を突破し、大台の300万件も近づいてきた。その要因について、同社の担当者に聞いた。 - 恋愛ゲームで100億円! ボルテージが成長できた理由
女性向けの恋愛シミュレーションゲーム市場で、ボルテージが成長している。栄枯盛衰が激しい業界で、なぜこの会社は売り上げを伸ばし続けたのか。その背景に迫ってみると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.