「決して安くない」のに、なぜ成城石井で買ってしまうのか?:ノッている会社は、ここまでやっている!(6/7 ページ)
総合スーパーが苦戦している中で、業績好調の企業がある。都市部を中心に展開する成城石井だ。店内には珍しい商品がズラリと並んでいるが、なぜそのような品ぞろえができるのか。『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』の著者・上阪徹氏によると……。
「お客さまのため」を貫く
徹底的な顧客志向を貫いて品ぞろえをしてきた成城石井。だが、その発想は商品にとどまらない。サービスも、お店の運営も、経営も「お客さまのため」を貫く。「お客さまにご満足いただく、お客さまに喜んでいただく」。これだけを目指し、動いているのである。
店舗数が増えても、エキナカのような新しい業態の店舗ができても、その姿勢は変わることがない。求められていることに、とにかく一つひとつ応えていく。やらなければいけないこと、基本を徹底する。それをひたすら継続する。
象徴的な話がある。首都圏で大雪が降ると、一般的な小売りでは物流がまひしてしまう。雪でトラックが動けなくなる、という物理的な理由だけではない。通常の動きに乱れが生じると伝票の処理が一気に複雑になるため、配送センターが配送をやめてしまうことがよくある。これはいわば、店や会社の都合で止まるのだ。
だが、成城石井はそれをよしとしない。商品を求めている顧客がいるなら、処理が複雑になっても、まず商品を届けるのを優先し、伝票処理などは後回しにする。用意さえ整えば出荷する。ある店に商品が足りず、近くの別の店には余っている、といったときには、店員が手で持って商品を運ぶこともある。
店同士もライバルではないのか、店ごとの売り上げなども関係してこないのか、と想像してしまうが、取材ではこんな答えが返ってきた。
「会社の店の都合など、お客さまには関係ないことです」
それこそ店員が商品を他の店に運ぶには、手間もかかるし、余計な費用も発生する。儲けを考えれば、非効率だ。しかし、それでも持っていく。答えはこう続いた。
「目的が違うんです。儲けるために持っていくわけではない。お客さまが必要だから持っていく。それが成城石井の考え方なんです」
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