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リゾートビジネスとしての観光列車はどうあるべき?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

各地で誕生する観光列車。列車は運輸交通分野だけど、観光列車をビジネスとしてとらえるとリゾート、レジャー産業である。特に豪華観光列車は、日本のレジャー産業では不得手だった富裕層レジャー市場への挑戦でもある。

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「伊予灘ものがたり」の評価が高い理由

 鉄道旅行も2つの属性で説明できる。「可処分所得が低く、可処分時間が長い」人の定番アイテムは「青春18きっぷ」だ。そして「可処分所得が高く、可処分時間が短い」人の象徴は、東北新幹線などの最上位席「グランクラス」だ。

 本題の観光列車に当てはめてみよう。「肥薩おれんじ食堂」「TOHOKU EMOTION」などのレストラン列車は、食事という上質な付加価値を与えつつも、日帰り、短距離という意味で、「可処分所得が高く、可処分時間が短い」人向けだ。その最たる存在がJR九州の「或る列車」となる。約2時間の乗車で約2万円。かなり贅沢な旅だ。

 可処分所得が低く、可処分時間が長い人の定番は、食事サービスなど付加料金の少ない列車だ。SL列車、トロッコ系の列車などがこの分野だ。運賃とわずかな指定席料金で乗れる。不便な遠い場所で走らせても、利用客は時間があるからやってくる。東武鉄道もそれを知っているから鬼怒川でSLを走らせると決めたのだろう。

 JR四国の「伊予灘ものがたり」は地味な列車ながら、雑誌などの観光列車ランキングの上位に入る。私だけではなく、先輩鉄道ライターや旅行作家諸氏から高評価だ。予約が必要で気が利いた内容の食事サービスがある一方で、食事を予約しなくても良い。食事なしで寂しければ、車内メニューでお茶やお菓子を適価で楽しめる。つまり、2つの属性の両方に対応している。幅広いニーズに応えられる仕組みが高評価につながった。

「伊予灘ものがたり」は2つの属性を取り込む(出典:伊予灘ものがたり公式サイト)
「伊予灘ものがたり」は2つの属性を取り込む(出典:伊予灘ものがたり公式サイト

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