テレビや新聞には、なぜ「文春砲」のようなスクープがないのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
年明けから「文春砲」の勢いが止まらない。ベッキーとゲス川谷氏の「不倫」報道を皮切りに、甘利明大臣の「口利き疑惑」、宮崎謙介議員の「不倫」などが続いているが、筆者の窪田氏はある弊害を懸念している。それは……。
「日本特有」の事情
いやいや、今回はたまたまでしょと思うかもしれないが、このような傾向は昨日今日始まったわけではない。
例えば、2000年代になってから閣僚の辞任を数えるとざっと30件。そのなかで明らかな健康上の理由、および政局や政府の方針に逆らっての罷免などを除く「不祥事」による辞任は18件。その半数となる9件は『週刊文春』『週刊新潮』などの週刊誌のスクープが引き金になったものなのだ。
これは「日本特有」の事情で、「権力の監視」が重要な役割となっている海外の報道機関には奇異に映る。だから、米国のOpen Source Centerというメディア研究機関は、「政治や企業などほとんどのスキャンダルは新聞ではなく、週刊誌や月刊誌から公表されている」と驚きを交えてレポートしている。
この傾向は近年にさらに顕著となっている。2010年代に入ると、民主政権、自民政権通算で不祥事辞任閣僚は7人だが、そのうちの5人は「文春」「新潮」「ポスト」の報道で窮地に立たされている。
もちろん、スキャンダルだけが政治報道ではなく、政策やらの問題点を指摘するのも立派な役割なのだが、そちらも正直、パッとしない。例えば、報道機関の間では「新聞(通信・放送を含む)全体の信用と権威を高めるような活動」に贈られる「新聞協会賞」というのがあるが、そこには政治のスクープは極端に少ない。
これがスタートした1957年から見ても、目立つのは、2014年の朝日新聞社特別報道部の「『徳洲会から猪瀬直樹・前東京都知事への5000万円提供をめぐる一連のスクープ』と関連報道」、1993年のやはり朝日新聞社会部の「『金丸氏側に5億円』と供述/東京佐川急便の渡辺元社長」をはじめとする金丸信自民党副総裁(当時)らの政界捜査をめぐる一連のスクープ、さらに1989年の毎日新聞政治部による連載企画「政治とカネ」くらいだ。
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