日本マクドナルドに回復の芽はあるのか?:証券アナリストに聞く(1/2 ページ)
2015年12月期の決算で過去最大となる347億円の最終赤字を計上した日本マクドナルド。いまだ厳しい経営状況にあるが、徐々に回復の兆しが見え始めているという。楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が解説する。
「マクドナルド、過去最大の赤字」――。先週半ば、新聞、テレビ、Webなどの経済メディアをこのニュースが賑わせた。
2月9日、日本マクドナルドホールディングスは前期決算(2015年12月期)で、347億円の純損失を計上した。2014年夏の使用期限切れ鶏肉問題や、2015年1月の異物混入問題の影響で、売り上げが大きく減少したことが響いた。
ただし、非常に厳しい決算の中に、将来に向けての復活の芽も見られる。
2015年の既存店販売は、前年比15.2%減少しているが、上半期が27.5%の減少に対し、下半期は1.2%の減少にとどまる。顧客の信頼を回復するために、次々と打ち出した施策が功を奏して、下半期からマクドナルドの店舗に少しずつ顧客が戻り始めている。
実際、2015年12月まで32カ月連続で客数は前年割れだったものの、翌2016年1月には、客数が前年同月比で17.4%増とプラスに転じ、既存店販売も同35%増に持ち直している。
品質管理問題だけが原因ではない
日本マクドナルドの低迷は、品質管理で問題を起こしたことだけが原因ではない。外食業界に起こっている構造変化への対応を誤ったことが、売り上げ低迷の根本にある。
今の日本でハンバーガーが売れなくなったかというと、実はそんなことはない。1個1000円以上もする高級バーガー店は好調だ。低価格を売りに成長してきたマクドナルドはこの流れに乗れていない。
また、健康に配慮したメニューが好調なのも、外食業界全体の傾向だ。ヘルシーメニューは多少単価が高くても好評である。例えば、野菜だけを使った吉野家の「ベジ丼」は並盛が530円と、定番メニューの牛丼(並盛)と比べて割高だが、販売を伸ばしているという。日本マクドナルドはこのブームにも、乗れていなかった。
外食業界の構造変化に対応しなかったのは日本のマクドナルドだけではない。米国の本社も対応を怠った。米国のテレビ番組で、マクドナルドのメニューがいかに健康に良くないかという特集をやっていても、マクドナルドは反論すらしなかった。世界のマクドナルドは、かつて大成功したビジネスモデルにあぐらをかいて、世の中に吹き荒れる高級バーガーブームや、健康メニューブームを無視していたのではないだろうか。仮に取り組んでいたとしても、それがマーケットに伝わっていなかったことは否めない。
マクドナルドの不振が続く米国で、価格は高いが使用する素材にこだわる高級バーガー店「Shake Shack(シェイク・シャック)」がブームになっている。同社は2004年に誕生したばかりだが、既に9カ国に展開し、昨年末には日本にも進出した。
日本マクドナルドは、なぜ高級バーガーブームに乗れなかったのか。実は、2013年に同社が1000円バーガーを試験的に発売して話題になったことがある。高級バーガーへの需要が日本に生まれつつあることに気付いてはいたわけだ。
ところが、こだわりバーガー路線を拡大することはできなかった。100円のハンバーガーを提供する店で、1000円バーガーを出しても消費者はすぐにはついて来ることができなかった。それがブランド戦略の難しさだ。
外食業には、それぞれブランドイメージがある。「安くて手ごろ」の店で「高価なこだわりメニュー」を提供してもすぐには売れない。味や素材だけでなく、店のムードやイメージ全般を変えないと、顧客の評価は上がらない。
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