フェイスブックの「無料サービス」は、本当に“中立性”を侵すのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/6 ページ)
フェイスブックの無料ネットサービス「フリー・ベーシックス」に対して、各方面から反対の声が出ている。途上国でネットにアクセスできない人たちに対して、無料でネット接続を提供するというもの。素晴らしい取り組みのように感じるが、実は問題をはらんでいて……。
フリー・ベーシックス構想
このフリー・ベーシックスは、フェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグの肝いりで2014年に始まったサービスだ。その前年8月に白書を発表したザッカーバーグは、「今日、全世界人口の3分の1より少し多い、たったの27億人しかインターネットに接続できていない」と指摘し、「ネットにつながっていない世界の3分の2の人々にも、インターネットにつながっている人たちと同じ機会を与えたい」と記してフリー・ベーシックス構想を述べた。
そして2014年にアフリカのザンビアを皮切りに、現在では38カ国でサービスを提供している。地域的に見ると、アフリカ20カ国、中南米6カ国、そしてアジアではインドを含む12カ国に広がっている。
現在、世界人口の85%以上が携帯電波を利用できる環境に暮らしている。しかしながらデータ通信(インターネットなど)は料金が高いため利用していない人が多い(すでに述べたように、世界人口の3分の2の多くがこれに当たる)。またインターネットを利用したことがない人には利便性が想像できないために、料金を払って使おうという考えに至らないケースも多い。
そこで登場するのがフリー・ベーシックスだ。フリー・ベーシックスのアプリをインストールすれば、無料でデータサービスに接続できる。フェイスブックは地元の携帯電話会社と手を組み、その無料システムを可能にしている。
さらにザッカーバーグは2015年12月にインドの有力紙『ザ・タイムズ・オブ・インディア』に寄稿し、インターネットにアクセスできることで貧困対策にもなると主張している。「インターネットにつながった10人のうち1人は貧困を脱することが分かっている」という。
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