街中にあふれる「公害コピー」をなくす方法:こだわりバカ(1/5 ページ)
過剰で無駄な言葉のせいで、本当に伝えなければいけない重要な情報が伝わらなくなっている「公害コピー」が街中にあふれている。このような公害コピーをなくすためには、どうすればいいのか。コピーライターの川上徹也氏によると……。
さてこの連載も最終回。これまで、飲食・食品業界における「こだわり」という言葉を筆頭に(関連記事)、いろいろな業種における「空気コピー=あってもなくても同じような効果がない言葉」について考察してきた。最後に言い残したことを書く。それは日本という国のいたるところに溢れている「空気コピー」の数々だ。
いや空気ならまだいい。実際、これらの言葉は、世の中に悪影響をまき散らす「公害コピー」になっている場合が多い。過剰で無駄な言葉のせいで、本当に伝えなければいけない重要な情報が伝わらなくなっているからだ。しかもたちが悪いことに、このような「公害コピー」をまきちらしている発信側は、罪が大きいことを自覚していない。「ちゃんと伝えたのにその通りにしない利用者が悪いんだ」くらいにしか思っていないのだ、たぶん。
乗客がマナーを守らないのは鉄道会社にも責任がある
例えば、電車に乗るために駅に着く。啓発ポスターがいたる所に貼ってある。「歩きスマホは危ない」「キャリーバックに気をつけて」「エスカレーターは歩かない」などなど。しかし、「歩きスマホは危ない」というポスターの前にいる人の多くがスマホ画面を見ている。当然歩きながら見ている人も多数いる。
電車に乗れば、「お年寄りや体の不自由な人に席をお譲りください」「ひとりでも多くの人が座れるように座席に荷物を置かないで」「優先席の前では携帯電話の電源をお切りください」など、車掌のアナウンスがひっきりなしに流れる。しかし優先席でスマホや携帯の電源をわざわざ切るような人はほとんどいない。
関連記事
- 「こだわりの○○」という言葉を使う店は、何もこだわっていない(絶対に)
街中に「こだわり」という言葉があふれている。「こだわりラーメン」「こだわり旅行」「こだわり葬儀」など。このようなこだわりのない使われ方に、コピーライターの川上徹也氏が燃えている。こだわりの原稿を読んでみたところ……。 - なぜ大学のポスターは「世界にはばたき」「未来を拓く」ばかりなのか
「ここに集い、世界に旅立つ」「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」――。大学のスローガンは、なぜ手垢がついた表現ばかりなのか。自称「大学コピーコレクター」の川上徹也氏が分析したところ……。 - 「お客様第一」がスローガンの会社は、なぜ「お客様第一」でないのか
企業の経営理念やスローガンを調べてみると、「お客様第一」をよく目にする。しかし、そうした企業は本当に「お客様第一」を実践しているのだろうか。「実践できていない」理由について、筆者の川上徹也氏は……。 - 自治体のキャッチコピーは、なぜ“メルヘン化”してしまうのか
自治体のキャッチコピーといえば、あってもなくても同じ空気のような存在の言葉ばかり。筆者の川上氏は、自治体のコピーは空気化し、メルヘン化するケースがあるという。その理由は……。 - “納豆不毛地帯”の大阪で、なぜ小さな店の納豆がヒットしたのか
「関西人は納豆が嫌い」と言われている中で、大阪の東部にある大東市で注目されている納豆メーカーがある。その名は「小金屋食品」。従業員数が10人も満たない小さな会社が、なぜウケているのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.