アップルが「iPhoneロック解除」に応じることができない理由:世界を読み解くニュース・サロン(5/7 ページ)
米国で「iPhoneロック解除」をめぐって大きな論争が起きている。騒動を詳しく見ていくと、この問題は米国だけのものでなく、私たちの生活にも影響を及ぼすかもしれないことが分かってきた。
途方のない突破方法
話を戻すが、今回のテロ犯のケースでは最後の自動バックアップが6週間前であった上に(ちなみにテロ犯は指紋認証も設定していなかった)、当局のミスもあってiCloudにもアクセスできなくなっている。だからこそ、アップルの協力でiPhoneを解除する必要があるのだ。
日本の報道ではあいまいになっているが、実のところ、FBIは決してデータの暗号化を解除するようアップルに要求していない。またバックドア(当局だけが侵入できる裏口)をiPhoneに作るよう求めてもいない。
それよりも、パスコード設定がされたiPhoneは、パスコードを連続で10回入力し間違えたら、携帯デバイス内のデータが永久に消滅する仕組みになっている。FBIは、その10回制限を解除するプログラムをアップルに作るよう求めているのだ。
そうすれば、FBIが捜査上でデジタル機器のパスコードを解除する際に行う、「Brute Force」と呼ばれるパスコード突破方法が使えるようになるからだ。このBrute Force、名前はカッコイイが、何のことはない、すべての考えられるパスコードを地道に試していく手法なのだ。
Brute Forceは途方のない突破方法だと言われている。現在のところ、iPhoneについて言えば、アップル側の設定もあって最大で1秒間に12.5個のパスコードしか試すことができず、6ケタのパスコードならすべてのコンビネーションを試すのに最長で5年半かかる。例えばパスコードが10ケタになれば、突破には最長で25年もかかってしまうという。つまり長いパスコードを使えば使うほど、Brute Forceで解読するのに莫大な時間がかかるようになる。ただそれはFBIがもつ技術力の問題であり、今回の議論には直接関係はない。
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