アップルが「iPhoneロック解除」に応じることができない理由:世界を読み解くニュース・サロン(6/7 ページ)
米国で「iPhoneロック解除」をめぐって大きな論争が起きている。騒動を詳しく見ていくと、この問題は米国だけのものでなく、私たちの生活にも影響を及ぼすかもしれないことが分かってきた。
この問題の出口はまだ見えない
今回の騒動はあちこちに波及し、賛否の意見が飛び交っている。この件について米政府関係者に話を聞くと、オバマ政権内でもこの問題については、意見が真っ二つに割れているという。IT企業に暗号化解除の裏技やバックドアを作るよう求めていたバラク・オバマ米大統領は2015年10月、企業側からの反対と言い分に理解を示して、その方針を断念したと言われている。
だが2015年11月に129人の死者を出したフランス・パリの同時テロ事件と、カリフォルニア州サンバーナディーノでのテロ事件によって、当局側は息を吹き返した。そして議論が最近、再燃しているのである。
どんな意見が出ているのか少し紹介すると、例えば「一度当局にアクセスを許せばその先はなし崩し的にバックドアが作られてしまう」というものや、「米政府が、暗号化したデバイスにアクセスできるようIT企業に強いる法律を作っても、結局、IT企業は米国外に拠点を移せばいいだけ」と指摘もある。また「中国やロシアが欧米企業にバックドアを作るよう義務付ける口実を与える」という懸念も出ている。さらに米シンクタンク・ブルッキング研究所の研究員らは、この問題の賛否を決めるのは国民、つまり議会であり、ティム・クックではないとアップルを批判している。
ちなみに米大統領選でもこの問題が俎上に載せられている。各候補が持論を述べる中で、例えば放言で知られる話題の億万長者、ドナルド・トランプ共和党候補も「アップルをボイコットしろ!」とツイートで物申して話題になっていた。だがすぐに、iPhoneを使ってこのツイートをしていたことが判明して笑いを誘った。
ともかく、まだまだこの議論に出口は見えそうにない。おそらく、最高裁まで行くことになるだろう。
関連記事
- 世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか
スクラブ製品が、世界的に注目されているのをご存じだろうか。私たちが何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉などの一部には、いわゆる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチックの粒子が使われている。その粒子が……。 - 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。 - 「最恐の殺人地域」を救うことができるのか 武器は日本の意外な“文化”
「中南米は危険」といった話を聞いたことがあると思うが、私たちが想像している以上に“危険”であるようだ。「世界で最も暴力的な都市2015年」を見ると、上位に中南米の都市がランクイン。こうした状況に対して、日本のある文化が期待されている。それは……。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.