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うどんチェーン、カフェ事業への多角化戦略の盲点:すごい差別化戦略(4/5 ページ)
大手うどんチェーンが、新たにカフェ事業に着手しています。多角化戦略の検討において、どのようなことが重要なのでしょうか?
多角化戦略の難しさ
ここが論点!
多角化戦略の検討において、どのようなことが重要なのでしょうか?
前述した通り、事業の多角化戦略は経営資源の有効活用、変わりゆく環境への対応など多くのメリットがあります。しかし、この戦略は机上では正しそうに見えても、実際に実行するとなると、なかなか難しいものだとあらためて感じた次第です。
まず多角化戦略の重要なポイントの1つに自社の強みを生かすということが挙げられます。このチェーンのうどん店事業はセルフサービス方式で運営されているため、すでにその方式に関する多くの知見(オペレーションの効率化など)が蓄積されているでしょうから、カフェもセルフサービスのほうがよいのかもしれません。そうすれば、少なくとも自社の強みは発揮されます。
もちろん、対象とする顧客との兼ね合いは重要であり、価格設定からも若者メインというより、やや高い年齢層を主たるターゲットにしていると考えられ、フルサービスの方式が採用されているのでしょう。しかしながら、そうなると本業の強みが十分に発揮されず、つまりカフェ事業で先行する他社よりも効率的に質の高いサービスを提供できる根拠がなくなってしまうわけです。
一方、変わりゆく環境への対応という視点に立てば、今後、低価格競争がますます厳しくなり、安さを売りにするうどんチェーンがうまくいかなくなった場合、高付加価値を提供するカフェ事業が、うどん事業に代わって企業を支えることになるかもしれません。
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