うどんチェーン、カフェ事業への多角化戦略の盲点:すごい差別化戦略(5/5 ページ)
大手うどんチェーンが、新たにカフェ事業に着手しています。多角化戦略の検討において、どのようなことが重要なのでしょうか?
経営者の熱い思いが何より重要
しかし、こうした多角化のセオリーに関わるようなこと以上に、筆者が気になったポイントは以下の点です。
起業の王道に関して、もちろんもうかるか否かは重要な問題ですが、そうした計算より、「自分が好きで好きで仕方がないことを社会に広めたい」といった経営者の熱い思いが何より重要であると思います。そうした経営者の熱い思いは末端のスタッフ一人一人に浸透していくはずです。特にカフェという業態では、経営者の持つこだわりが商品や顧客へのサービスにおいて大きな「差」を生みます。今回のうどんチェーンのカフェは、店舗やメニューの構成などは素晴らしいのですが、個人的に大満足とまでいかなかった理由は、こういう点にあると思います。
香川県は「うどん県」ということで、滞在中、うどん三昧でした。どの店も、うどんに対する愛、こだわり、プロフェッショナリズムにあふれていました。例えば、あるうどん店では、天かすが大きさごとに3つに分けられていました。「さすが本場」「さすがのこだわり」と大変驚いた次第です。このようなこだわりが、店の魅力、顧客満足につながっていくのではないでしょうか。
今回取り上げたうどんチェーンは、本業ではあえてセントラルキッチン方式を排除するという差別化戦略のもと、各店舗の中に製麺機を持ち込んで「できたて」本物のうどんを提供することにより、成功を収めています。その成功モデルをカフェ事業に適用し、ライバルに対して差別化を図っていく試みが先に示したコーヒーの店内焙煎などに見られるだけに、サービスを中心とした今後の改善策に期待したいと思います。
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