ホワイトカラーも一流にする「トヨタの自工程完結」:ノッている会社は、ここまでやっている!(3/7 ページ)
日本を代表する企業「トヨタ自動車」が、2007年から社内で大きな「取り組み」を進めている。「ホワイトカラーの働き方」改革だ。どんなことをしているかというと……。
2007年「自工程完結」が全社方針に
実は自工程完結は、最初は現場の間で広まり、大きな成果を生み出した。品質管理の検査で、どうしても出てきてしまう不具合が、この取り組みで一気になくなったのだ。象徴的な事例がひとつある。工場内の「水漏れ品質保証」だ。工場内でみんなが最も困っていた、最も難しい課題だった。
できあがったクルマに激しく水をかけ、水漏れがないか見ていく試験では、ごくまれに水漏れが見つかるのだが、どこに問題があったのか、把握するのに大変な労力が必要だった。すべての工程をチェックしないといけない。そこで、この水漏れが一切起きないようにする方法を考えた。それは、水漏れにかかわる2000以上の作業をすべて洗い出し、書き出し、水漏れしないよう精査していくことだった。
これこそ「心がけ」ではなく、科学的に捉えるということ。自工程完結である。そんなことができるはずがない、という声もあった。ところが、実際に水漏れゼロが達成できてしまう。しかも、水漏れ以外にもプラス効果をもたらす。
以来、「心がけ」ではなく、「すべての工程を洗い出し、見直して精査し、何をすればいいのか、という行動まで落とし込む」プロジェクトがあちこちで生まれていった。この通りにやれば、必ず結果が出る。安心して仕事ができる、という環境ができた。生産性ばかりでなく、モチベーションも上がった。やがて、他の工場でも競って取り組みが進んだ。
そして、スタッフ部門の仕事も、このやり方で変えていこう、と「自工程完結」が全社方針になったのが、2007年だった。
現場の仕事とスタッフ部門の仕事は違う、というイメージを持つ人も、少なくないかもしれない。しかし、それでは結局、「心がけ」を持っているだけなのだ。佐々木氏は、スタッフ部門の仕事にも、「工程」があると気づく。それが、「意思決定」だった。
資料作りであれ、企画であれ、営業であれ、何かのアウトプットを出して行く途中には、いくつもの「意思決定」が存在しています。「意思決定」が積み重なって、最終的なアウトプットは出てきているはずなのです。
例えば、会議で使用する資料を作る。スライドにするのか、ペーパーにするのか。どんなソフトウェアを使って作るのか。どんなデザインを選ぶのか。どんな書体にするのか。何枚にするのか。データはどこから持ってくるのか。表にするのか、グラフにするのか。いくつ入れるのか……。すべては、資料を作る人の「意思決定」で選んでいくのだ。
関連記事
- 競合店ができても、ドトールの売り上げがあっさり元に戻るワケ
コーヒー業界が熾烈な競争を極めている。喫茶店、ファミリーレストラン、コーヒーチェーン、コンビニ、サードウェーブなど、さまざまな業界が参入しているが、そんな中で堅調な売り上げを伸ばしているコーヒーチェーンがある。ドトールだ。 - 「決して安くない」のに、なぜ成城石井で買ってしまうのか?
総合スーパーが苦戦している中で、業績好調の企業がある。都市部を中心に展開する成城石井だ。店内には珍しい商品がズラリと並んでいるが、なぜそのような品ぞろえができるのか。『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』の著者・上阪徹氏によると……。 - 恋愛ゲームで100億円! ボルテージが成長できた理由
女性向けの恋愛シミュレーションゲーム市場で、ボルテージが成長している。栄枯盛衰が激しい業界で、なぜこの会社は売り上げを伸ばし続けたのか。その背景に迫ってみると……。 - おでんの「大根」が一番おいしいのは? ローソンがとにかく面白い
消費構造の変化、情報化の進展、かつてないグローバル化……。ますますビジネスが難しさを増す中、ユーザーから変わらぬ高い支持を得ている企業は一体何をしているのか。5社の取り組みを紹介する。第1回はローソン。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.