リサイクルの「エンタメ化」がデロリアンを走らせた(6/8 ページ)
2015年10月、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で活躍したデロリアンが復活――。映画ファンのみならず、多くの人はこのニュースに驚いたのでは。ハリウッドとどんな交渉があったのか? 日本環境設計の岩元社長に話を聞いた。
小さな資本で大きな仕組みを生み出す秘けつ
永井: 優位性のある技術を核に起業した企業は、1つの「製品」であったり、それを武器に大手企業と提携し経営を安定させようとしたりするのが、普通なのかもしれません。一方、御社は、ベンチャー企業であるにも関わらず、技術をリサイクルインフラという仕組み作りの1つとして捉えたわけですね。これも一見非合理な経営判断ですが、実は極めて合理的なんですね。
岩元: まずは繊維、ファッションの分野が取り組みやすかった、というのはあるのですが、一旦仕組みを確立すれば横展開が容易ですから。パートナーも最初は5社というところから、現在の150社、団体まで増やし続けてきました。これからもブランドの確立が大切ですから、その部分に注力していきます。
消費者に向けたメッセージも、「(資源を)集めよう」とは最近言わずに、皆で何かを「作ろう」という風に変えてきています。そうやって、リサイクル原料から生まれた製品――そこには蜂をモチーフにしたロゴがあしらわれ、消費者は自らが生み出したそれらの製品を手に取って購入してくれる、というビジョンを描いています。
永井: なるほど、だから「デロリアンを動かそう」なんですね。それにしても組織の規模が小さいにもかかわらず、これだけの仕組みと工場を整え、しかも創業以来ずっと単月黒字というのに驚かされます。
岩元: 100カ月以上黒字ですね。ベンチャーキャピタルの皆さんもビックリされます。創業時の資本金は120万円でしたからね。まず大手商社を、今日のようなお話で口説きました(笑)。彼らが代理店となって、さまざまな企業にリサイクルのソリューションパッケージとして売り込んでくれたんです。これが大ヒットとなりました。
永井: 工場はどうされたんですか?
岩元: もちろん自前のエタノール工場なんて造れません。それに、当時世の中にそんな工場は存在していなかったんです。そこで、新日鉄さんの製鉄所に注目したんです。鉄を作る工程の中に、有機物を循環させる設備があり、研究所の知己を説得してそこを改良してもらったんですね。
永井: それを、無償で……?
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