アメリカの研究機関が、家電を兵器に変えるアイデアを募集するワケ:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
米バージニア州にある「DARPA(米国防高等研究計画局)」が、最近興味深いプロジェクトを立ち上げた。その名は「Improv」。一体、どんなプロジェクトなのかというと……。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
3月11日、米サイエンス誌で、中国が停滞する経済を盛り上げる目的で「中国版DARPA(ダーパ)」を設立するというニュースが報じられた。
DARPAとは、Defense Advanced Research Projects Agency(米国防高等研究計画局)の略だ。米バージニア州でテクノロジーを軍事などに利用する目的でR&D(研究開発)を行う米国防総省の研究機関である。
私たちがこの瞬間まさに使っているインターネットも、もともとはマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授などのアイデアをベースにDARPAが開発したものだ。そのほかにも例えば、ステルス技術やGPS(衛星利用測位システム)、無人戦闘機などもDARPAが作った。またiPhoneに搭載されているSiriも、もともとはDARPA関連のプロジェクトから生まれている(現在さらなる知能アシスタントを開発中)。とにかく米軍などの枠を超えて先の世界を見据え、現代のテクノロジーに大きな貢献をしている組織だ(参照リンク)。
そんな研究所を自分たちでも作りたい――世界第二の経済大国になった中国がそう思うのも分からなくはない。国の英知を集め、国のために生かせる技術を開発する。この考えは何も中国に限ったことではなく、最近では韓国も同様の研究所の立ち上げを計画している。また日本も、2014年に「武器輸出三原則」を見直して武器輸出や共同開発などが可能になり、「日本版DARPA」が動き始めているとの話もある。
そんな一目置かれるDARPAが最近、興味深いプロジェクトを立ち上げた。「Improv」というプロジェクトだが、このプロジェクトからは私たちが今後どんな時代に突入していくのか垣間見れる。
そもそもDARPAは、1957年にソビエト連邦が人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した際に、欧米が抱いた危機感から誕生した。当時、米国をはじめとする西側諸国には大きな衝撃が走り、ソビエトの偉業は「真珠湾攻撃」にも匹敵する屈辱だと言われた。それをきっかけに、テクノロジー開発戦争に勝つため、1958年にDARPAは設立された。それからの実績はすでに述べた通りだ。
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