アメリカの研究機関が、家電を兵器に変えるアイデアを募集するワケ:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
米バージニア州にある「DARPA(米国防高等研究計画局)」が、最近興味深いプロジェクトを立ち上げた。その名は「Improv」。一体、どんなプロジェクトなのかというと……。
電化製品を「兵器」につくり変える
ではDARAPが3月11日に発表した新しいプロジェクト「Improv」とはどんなものなのか。
簡単に言うと、Improvは、誰でも電気屋さんやオンラインショッピングで簡単に手に入れられるような既成の電化製品などを、兵器につくり変えるというプロジェクトだ。家にある家電や、電化製品に含まれるコンピュータなどを使って、安全保障の脅威となりえるようなモノを作れないか探るのである。それは実社会でもいいし、サイバー空間の脅威でもいい。実際に兵器化できるアイデアを広く募集しているのだ。
DARPAの公式リリース文にはこう書かれている。Improvは、電化製品や部品、さらには公開されたプログラムコードなど一般的に手に入る製品を、「改造したり合体させる方法を検討するものである」。さらに「DARPAは、広い視点を得るため、専門性のある全領域から、エンジニアや生物学者、情報技術者や資格のあるエンジニア、さらに技術をもつ愛好家まで、アイデアを募る。そして、簡単にアクセスできるハードウェアやソフトウェア、プロセスや方法が、いかに未来の脅威となりうる道具やシステムとして利用出来るかを明らかにしてほしい」
少し堅苦しい説明だが、つまりDARPAは、さまざまな分野の人たちに、それぞれの目線で今のテクノロジー市場を観察して、兵器などに転用できる製品やアイデア、プログラムコードなどのアイデアを提供してほしいのである。このプログラムに参加したければ、DARPAが用意した提案書などでアイデアを提出する。しかもこのプロジェクトは米国民に限定しておらず、基本的に日本人でも応募できる(参照リンク)。ただし、守秘義務や法律の問題などさまざまな条件を満たす必要があり、面接など頻繁に米国に行けなければならないので、気楽に応募できるものではない。
そして実際にアイデアが採用されれば、脅威を現実につくり出すための研究費が“賞金”という形で提供される。採用後、プロジェクトは3フェーズに分けられる。まず第1フェーズは、兵器作りが実現可能かどうかを研究する準備期間で、4万ドルが支給される。第2フェーズはプロトタイプの製作過程で、7万ドルが支払われる。最後は評価段階で、2万ドルを受け取ることができる。合計すると13万ドルが支払われることになる。
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