いま“逆求人型”の就活が必要とされるワケ(3/3 ページ)
いま“逆求人型”の就活が盛り上がりを見せている――。就活定番のイベントといえば合同企業説明会、いわゆるゴウセツ。しかしいま、こうした従来の就活スタイルを変える新しい風も吹き始めているという……。
多様な人材を求めている企業
今回のイベントへの参加企業は20社。業界はさまざまで、ベンチャー企業から大手企業まで集まった。学生にとってのメリットはよく分かったが、一方で、企業にはどのようなメリットがあるのか。
本イベントの運営責任者であり、10年以上にわたり逆求人型就活イベントの運営に携わってきた川中義卓氏によれば、中小やベンチャーなど、思うように人材を採用できない企業の場合は「学生と対面での接点を持つことで採用率を高められる」「採用コストを抑えられる」などのメリットがあるようだ。
では、比較的学生を集めやすい大企業の場合は、なぜ逆求人型の採用方法を取り入れるのだろうか。川中氏は「企業がより多様な人材を確保したいと考えるようになったため」だと捉えている。
「従来型の採用方法では、自社に興味を持ってエントリーしてくれた学生の中からしか選ぶことができませんでした。自社に興味、関心を持っていない学生に対しても積極的にアタックし、多様な人材を獲得しようと考えイベントに参加する企業が多くなっています」(川中氏)
近年、企業がより生産性を高めていくために、多様な人材を活用する「ダイバーシティ」という考え方がより重要視されている。環境の変化のスピードが早い現代社会では、多種多様なタイプの人材を社内に置かなければ、環境の変化への対応が難しくなると考えられているからだ。
従来型の採用方法では「自社に興味を持ってエントリーした学生」に限られた層(内側)の人材だけが集まることになる。自社や自社の業界に興味がない、存在も知らない層(外側)に対してもアプローチをして採用することで、より多様性を持たせたい考えがあるのだという。また、優秀な人材を見つけるという点においても、内側ではなく、外側にこそ多くいるはずという考えもあるそうだ。
「学生側と一緒で、新しい出会い、意外な出会いを企業も求めています」(同)
このように、学生側と企業側の双方にメリットがある逆求人型の就活スタイル。いま、本イベントを主催した同社だけでなく、さまざまな企業が逆求人型の事業に乗り出してきている。
川中氏は「同業他社が増えるのは大歓迎。今までのような『企業ありき』の就活だけでなく『学生ありき』の就活がもっと主流になってほしい」と語った。
採用する側も大変だが、就活をする学生はもっと大変である。前述したように、従来型の就活スタイルでは就活が長期化するなど、学生の負担は重い。「学生が企業を探す」のではなく「企業が学生を探す」という新しい就活の形は、その課題を解決してくれるはずだ。
関連記事
- 大学生の就職内定率、12月時点で80.4% 5年連続の改善でリーマン前の高水準に
大学生の就職内定率は5年連続で改善し、リーマン・ショック前とほぼ同水準となった。 - 「2年前のままで良かった」学生困惑 経団連、採用選考解禁を6月に前倒し
経団連は、現在大学3年生の採用選考の解禁時期を2カ月前倒しの6月にする方針を発表した。 - 92.5%の大学生が内定を獲得――入社後は?
2016年3月卒業予定で、民間企業への就職を希望している大学4年生・大学院2年生の92.5%(1月15日現在)が、内定を獲得していることが、アイデムの調査で分かった。 - 就活が大学生活の妨げになる本当の理由
今シーズン、日本経団連が就職活動の開始時期を遅らせたが、うまくいかなかった。また就活スケジュールの変更が議論されるだろうが、何十年も前の就職協定の時代から振り返ってみれば明らかなように、時期をどうにかすれば解決する問題ではないのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.