道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」勝利の方程式:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
北海道新幹線の開業と当時に、道南いさりび鉄道も開業する。並行在来線の江差線を継承する第3セクターだ。5月から運行を開始する観光列車「ながまれ海峡号」の予約も盛況という。この列車の仕掛け人に誕生の経緯を聞いた。
観光列車の「上下分離」スタイル
ここまでの話で「観光車両」と「観光列車」の2つの言葉が出てくる。似ているので整理しよう。
観光車両とは車両そのものだ。ほかの車両とは色が違うけれど、普段は普通列車として運行する。ただし車内には地域の観光情報が掲示される。これはながまれ号である。この車両を使って、特別な食事を提供し、特別なダイヤで運行する列車が「ながまれ海峡号」となる。
観光列車は全国のローカル線で取り組まれている。しかし、ながまれ海峡号は新しい事例になるだろう。観光列車に関する企画、プロデュース、各種手配、広告、募集、催行までのすべてを日本旅行が一括で実施する。道南いさりび鉄道の仕事は、あらかじめ定められたダイヤで車両を走らせるだけだ。つまり、観光列車のハードは鉄道会社、ソフトは旅行会社として「上下分離」型になっている。
ながまれ海峡号について、詳しい話を日本旅行の瀬端浩之氏に聞いた。瀬端氏は日本旅行の鉄道プロジェクトとして、今まで数々の鉄道旅行企画を成功させてきた。優れた鉄道旅行企画を表彰する「鉄旅オブザイヤー」受賞者の常連でもある。
日本旅行としても「観光列車」をまるごと引き受けるというスタイルは初めてだ。どうしてこのような形式になったのだろう。
「会社設立直後の道南いさりび鉄道は安全運行に集中していただく。観光列車はノウハウのある私どもにお任せいただきたいと思いました。これまでも鉄道旅行企画を成功させ、力を入れている弊社が担当することで、円滑かつ早期に観光列車の実現ができました」(瀬端氏)
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