次世代データセンターは新潟に経済効果をもたらすか?:「雪害」から「利雪」へ(3/3 ページ)
いま新潟県で官民一体のデータセンターが相次いで新設されようとしている。なぜ新潟なのか? そこには他の地方ではなかなか実現が難しい理由があった。
新DCの特徴は、冷涼な外気と雪氷を活用することで、1年中、機械冷房を稼働させないという高い省エネ性である。実はDCの消費電力のうち4割以上がサーバシステムなどを冷却する空調によるもの。これを丸ごと自然の外気と雪氷で補うというわけだ。
具体的には、冬場に降り積もった雪を保存しておき、夏場にその冷気を冷房代わりに利用する。日本有数の豪雪地帯である新潟だからこそ可能な仕組みである。グリーンエナジーデータセンター(GEDC)と呼ばれる同様の取り組みは、既にさくらインターネットが運営する所有する石狩データセンター(北海道)や、青い森クラウドベースの六ヶ所村データセンター(青森県)でなされており、さまざまな成果が実証されている(石狩データセンターは外気冷房のみ)。
最も大きな効果はコスト削減だ。メディックスの試算によると、サーバ500ラック規模のDCを運用した際の年間コスト比較で、首都圏の約23億5000万円に対し、新潟の寒冷地型DCでは約14億5000万円と、38%のコスト削減が実現できるという。取材協力してもらったデータドックの山本祐二取締役CMO(最高マーケティング責任者)は「電気料金の一部給付といった公的資金を含めるとコスト競争力はさらに高まる」と力を込める。
急速に広がりを見せる新潟のDC市場。地元の最大の期待は経済効果だ。古くから新潟は冬場の大雪に悩まされてきた。他の地域とを結ぶ交通網は寸断され、農作物なども十分に育てられない。江戸時代後期における越後魚沼の雪国の様子を描いた「北越雪譜」では、雪は憂鬱(ゆううつ)で辛いものだとされている。
ところが、今まさに新潟にとっての雪の価値観が変わろうとしている。長らく雪害対策が叫ばれてきたが、現在は利雪対策、つまり雪を積極的に利用して産業発展などにつなげようという考え方が浸透してきた。DCはその代表例と言える。これから次々と誕生するであろう新潟の新設DCが経済成長にどう寄与するのか注目が集まっている。
【変更履歴】一部事実と異なる箇所があったため、記事初出時から変更しております。訂正してお詫び致します。(4/6 16:00)
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