激戦ラーメン市場、それでも「一風堂」が選ばれ続ける理由:福岡から海外へ(4/4 ページ)
31年前に福岡で創業したラーメンチェーン「一風堂」の成長が止まらない。国内外で出店攻勢をかけているのだ。1年間で約3600ものラーメン屋が閉店に追い込まれる激戦市場において、なぜ一風堂は顧客に選ばれ続けているのだろうか。
ニューヨークで成功したわけ
差別化と土着化。一風堂のこの戦略は国内だけでなく、海外での事業展開でも決してぶれることはない。その成果が大きく現れたのが、米国・ニューヨークでの成功だ。
2008年3月、ニューヨークのマンハッタンに米国1号店「IPPUDO NY」をオープンした。たちまちニューヨーカーの心を射止め、連日のように大盛況となった。来店者は1日当たり500〜600人、年間で20万人以上がIPPUDO NYに詰めかけた。その結果、初年度の売上高は約4億5000万円と、当初の目標数字を大幅に超えたのだった。
成功の要因として原氏が挙げるのが、「ラーメン屋」ではなく、「ラーメンダイニング」というコンセプトを全面に打ち出したことである。店内にはバーを併設し、ほかのレストランなどと同じく、ウェイティングバーとして座席が空くまでの待ち時間に利用できるようにしたほか、企業のエグゼクティブなども訪れたくなるような高級感ある、洗練された雰囲気を作り上げた。主力メニューの白丸元味(Shiromaru Hakata Classic)は15ドル(2016年3月現在)と、日本よりも高い価格設定だったが、客足にまったく影響はなかった。
「海外のほとんどのラーメン屋は日本のモデルをそのまま横展開しただけ。つまりラーメン屋そのままだ。けれども、一風堂はレストランとして受け入れられるよう他社と差別化を図り、またその街の文化に応じて自分たちを柔軟に変容させて土着化していった。それが結果的に海外での一風堂のラーメンの格を高めることにつながったのである」(原氏)
現在、一風堂の海外店舗は、米国のほか、シンガポール、香港、台湾、中国、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、英国、フランス、オーストラリアに広がる。今後は加速度的に海外シフトを強めていくとともに、力の源カンパニーとしても一風堂などのラーメン事業に次ぐビジネスの柱として新たな挑戦に乗り出している。
次回は、同社のさらなるビジネス拡大に向けた取り組みを伝える。
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