ヨーロッパでも過熱化 衛星観測ビッグデータをどう利用する?:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
2016年に入り、衛星観測ビッグデータや衛星システムの利活用が欧州で活発化している。ソフトウェア大手のSAPや航空宇宙大手のAirbusなどがさまざまな取り組みを進めているのだ。
Airbusは農業分野に活路を見出す
Airbusも衛星観測データ利活用に向けた取り組みを進めている。同社の航空宇宙部門である欧Airbus Defense and Spaceは、2月に米国の農業・食品企業である米J.R.Simplotに対する衛星観測画像提供を締結した。Simplotは1929年創業で、世界で初めて冷凍フライドポテト製品の開発に成功したフレンチフライメーカーでもあり、製品輸出先は世界40カ国におよぶ。
今回の協定によりSimplotは、米国やメキシコにおける50センチメートル分解能の衛星画像をクラウド上で準リアルタイムに取得可能になる。農業従事者に対し分析レポートを提供することで、農作業に際しての課題解決や、農作物の生産性向上に寄与する。具体的には、種まきの密度や農薬の最適な散布率、疫病管理などが可能になり、アーモンド、じゃがいもなどの生産性向上や収穫量増大が期待される。
Simplotの技術ディレクターであるアラン・フェッタース氏は今回の提携に関して「Airbusとの提携により農業従事者に対してエーカー単位ごとの効率性や生産性に関して、より高度な示唆提供が可能になる」と語る。こうしたPrecision Agriculture(精密農業)分野での衛星データ活用に関しては、以前のコラムの中でも、衛星ベンチャーの米Planet labsと営農支援ベンチャーの米FarmLogsの提携をお伝えしたが、広大な土地で大規模農業がなされている米国においては期待される分野だ。
欧州の宇宙機関や大手企業も本格的に動き出した衛星観測ビッグデータと衛星システムの利活用。世界中の機関や企業がさまざまなトライアルを進めるこの分野でどのような産業の出口が待っているのか、注視していきたい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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