『天地人』では見せなかった直江兼続のホントの素顔:「真田丸」を100倍楽しむ小話(2/2 ページ)
上杉家の直江兼続といえば、当主の上杉景勝を支えた股肱の臣として活躍しましたが、実はかなりの皮肉キャラだったようです。
あるとき、政宗が純金でできた「天正大判」を手に入れました。目立ちたがりの政宗はさっそく得意げに武将たちに見せびらかしました。そこに居合わせた兼続にも大判が回覧されてきたのですが、兼続は手で受け取らずに広げた扇子に載せて眺めたそうです。
そこで政宗が「遠慮せずに手に取って見なさい」と言ったところ、「手が汚れるので触りたくない」と兼続はやり返したのです。
編集部F: 政宗の激高ぶりが目に浮かびます……。兼続といえば、2009年の大河ドラマ『天地人』では妻夫木聡さんが演じた好感度高い武将の印象を持っていましたが、こんな一面があったとは意外でした。
小日向: 兼続に対する印象を変えるネタはまだまだありますよ(笑)。兼続の兜は「愛」という文字が描かれていたことで有名ですが、そんな愛という言葉とは裏腹に、血も涙もないこともやっていたのです。それが「閻魔(えんま)大王に宛てた書状」です。
編集部F: 何だかおどろおどろしいですね。
小日向: 上杉家のある武将が下人を成敗してしまったということで、その殺された者の親類が兼続のもとへ「生き返らせてほしい」と訴えに来ました。
当然、生き返らせるのは不可能なので、銀貨を渡して、これで納得してほしいと兼続は退けようとしました。ところが、どうしても生き返らせてくれと聞かないので、兼続は筆を取り、「閻魔大王に生き返らせてもらうよう書状を書いてやるので、これを届けてもらえないか」と言い、訴えに来た者たちを斬殺するよう部下に命じたのです。さらにその閻魔大王に宛てた書状と同じ内容の高札を立て、民への見せしめにしたといいます。
編集部F: そういえば、真田丸のドラマの中で信繁が上杉家へ人質として赴いたとき、最初の場面で農民が訴えに来ていましたが。
小日向: そう! あれを見て、「え、いきなり閻魔大王のエピソードを出しちゃうの!?」と、ドキドキしながらテレビを観ていました。結局、違うストーリーだったわけですが、もしかしたらあのシーンも、実はこのエピソードをにおわせたいという意図があったのかもしれませんね。
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