災害取材を行うマスコミが、現地で非常識な行動をとる理由:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
関西テレビ放送の中継車が、被災地のガソリンスタンドで給油待ちをしていた車列に割り込んだことが発覚した。過去にも被災地でマスコミの非常識な行動が問題になっているが、なぜ彼らは“迷惑”なことをしてしまうのか。筆者の窪田氏によると……。
「災害報道」と「自粛」のあり方
「分かりやすく派手な被害」を強調され、連日のように繰り返し報じられれば、誰でも馬鹿騒ぎを悪いと考え身を慎む。尾木ママが言うような、「人間らしい共感能力」ということもあるかもしれないが、「罪悪感」という部分も大きいと思っている。テレビや新聞が「甚大な被害」を強調すればするほど、人々は「気の毒に」と心を痛める一方で、自分たちの恵まれた境遇に胸をなでおろす。その「罪悪感」が「自粛」の空気を生む。
「自粛」という言葉の意味をひけば、「自分から進んで、行いや態度を改めて、慎むこと」とある。素直に読めば、「他者への慈しみや気遣い」より、あくまで「自分のため」のような印象を受ける。
果たしてこの「慎み」はいったい誰のためのものか。我々が自粛をすることで、本当に被災者のみなさんは喜んでいるのか。
日本はどこでも自然災害が起こり得る。これから被災をするであろうすべての人のため、「災害報道」と「自粛」のあり方を、真剣に議論すべきときがきているのかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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