海外メディアはどう報じたのか 先行き不透明な「電力自由化」(2/4 ページ)
日本で電力の自由化が始まった。これまで電力会社が独占していた市場が開放されたわけだが、海外メディアはこのことをどのように報じたのか。
電力自由化はうまくいくのか
言うまでもなく、こうした記事は日本市場を狙う外国企業の関係者などが読むことになる。実は、すでに米国のゴールドマン・サックスやGE、ドイツのソーラー電池企業や中国の上海電力、オートラリアの投資会社などが日本参入を明らかにしている。世界的にも今回の自由化への興味は低くはない。今後、日本市場への進出を狙って、日本の電力自由化を分析した記事を注視している企業は少なくないだろう。
となると重要になるのは、電力自由化がうまくいくかどうかの展望である。英字メディアはどう分析しているのか。
既出のブルームバーグは、電力自由化成功の鍵の1つである電力価格の低下について、「長い目で見ると不明確だ」と書く。そして日本の専門家への取材から、「市場開放は電力料金と燃料価格により密接に関係するため、必ずしも価格低下には繋がらないだろう」と指摘している。
自由化によって電力価格が低下するかどうかについては、すでに自由化している海外の例を見ても一概には言えない。例えば米国では電力政策は州ごとに決められているため、さまざまな実例が存在している。米ブルームバーグは2015年10月に配信した「日本の電力市場が改革されることで生まれる670億ドルの市場」と題した別の記事で、電力自由化の効果についてこんな指摘をしている。「アナリストや学者らの間では、電気市場の自由化が消費者に利益を与えるかどうかについて見解が割れている。国際エネルギー経済政策ジャーナルの調査によれば、米国で電力市場を再構築した米11州とワシントンD.C.では、価格は全国的な価格に比べて改革前よりも4倍以上早く増加している」
要するに、米国では電力自由化によって電力料金が上昇しているという。そこでこの国際エネルギー経済政策ジャーナルのリポートに当たって改めて読んでみると、確かにこんな記述がある。「経済理論では“フリーマーケット(自由市場)”の競争は自ずと価格下落をもたらし、それによって効率性が高まり、社会に有益であると言われる」と前置きをしつつ、「ただ調査結果では、“フリーマーケット”の競争市場が価格低下をもたらすという経済理論は、電力市場には当てはまらないことを示している……その理由は、電力業界独特の技術的また組織的な限界があるのかもしれない」。この「技術的または組織的な限界」とは、発電能力やそのコスト、技術革新といった課題や、送電システムのことを指している。
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