海外メディアはどう報じたのか 先行き不透明な「電力自由化」(3/4 ページ)
日本で電力の自由化が始まった。これまで電力会社が独占していた市場が開放されたわけだが、海外メディアはこのことをどのように報じたのか。
米国の電力自由化は失敗
米国で電力自由化を失敗した例は参考になるかもしれない。自由化が失敗したとされる州では、十分に供給ができなくなり、停電が発生するケースが起きた。例えば、カリフォルニア州では電気料金の上限が決められたことで、電力会社が上昇した発電コストに耐えられなくなって倒産するに至った。当時、自由化の試みは中断された。
米国の電気工学技術専門誌「IEEEスペクトラム」もWeb版で、「日本のエネルギー市場改革の先行きは予測するのが容易ではない」と題する記事を掲載。その理由は、例えば「エネルギー源と価格の不確定さ、そして発電施設のコストが高いという事実」という懸念があるからだとする。
英字メディアを見ると、鍵となるのは「発電」であることに気づかされる。そうなると日本では、再稼働で揺れる原子力発電の行方を注視しなければならない。米シカゴ・トリビューン紙は、読売新聞の社説を英訳した記事を載せている。読売新聞から引用すると、「気がかりなのは、原子力発電所の再稼働が遅れ、大手電力の供給力も十分ではないことだ。自由化による競争促進は、電力の安定供給が前提である。安全が確認された原発の再稼働を進め、供給余力を確保することが欠かせない」という。
英フィナンシャル・タイムズ紙は2015年の記事で、「日本の電力市場の5年後を予想するのは難しい。なぜなら、原子力がどうなっていくのか誰にも分からないからだ」と指摘している。だが電力自由化は「良い点もあるかもしれない」とし、「企業が団結することで業界が盛り上がり、日本のエネルギー業界がアジアやその他のエネルギー需要の高まっている市場へ参入することを可能にするかもしれない」と分析している。
ただ原子力発電の今後を考える上では、別の海外メディアによるこんな見解もある。
米ワイヤード誌は、電力自由化によるイノベーションに焦点を置いた記事を掲載。その中で「日本政府は市場原理によってエネルギー分野でイノベーションが生まれることを望んでいる。そう、電力購入者が最安値の電力を買うなら、事業者側はさらに低い価格を提供できるよう競わなければならなくなる」と述べている。政府が実際にそう考えているのかどうかは別にしても、日本が低価格を実現するためにイノベーションをさらに発展させる必要性に迫られるというのは興味深い指摘だと言える。
もちろんエネルギー業界に参入する他業種の企業が、抱き合わせのサービスを提供するなどして価格を下げていくという現象も見られるはずだ。だがそれ以外でも、イノベーションの発展につながっていくかもしれない。
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