前代未聞の「スローテレビ」が、世界で注目されているワケ:来週話題になるハナシ(4/4 ページ)
「スローテレビ」という番組をご存じだろうか。いま、ノルウェーで爆発的なヒットになっていて、番組によっては国民の50%ほどが視聴しているという。ひとつの題材に絞って映像を長時間かけてゆるく放送するというが、どんなコンテンツがあるのだろうか。
「スローテレビ」の可能性はまだ未知数
アイスランドでも、公共放送の「RUV」が子羊の映像を24時間生放送する番組を制作。子羊が生まれるシーズンに合わせて、アイスランドの伝統的な農家の暮らしぶりを垣間見れる番組になっている。
ドイツでは、ドイツ公共放送系列のバイエルン放送が所有する「ARD-alpha」で、「スローテレビ」の番組を制作している。例えば職人がチェロやジュエリー、時計などを製作する様子を撮影し、画面を4分割にして放映。ナレーションや音楽はなく、ただひたすら職人が作業する音だけが聞こえるスローな番組になっている。
英国では、「BBC FOUR」が「Goes Slow」という番組名で、木の椅子や伝統的なステンレス・ナイフなどの製作風景を流す30分番組を放映している。さらに、英国運河(ケネット・エイボン運河)を特集した2時間番組やロンドンにある世界屈折の美術館「ナショナル・ギャラリー」を紹介する3時間番組も制作している。
また、米国でもロサンゼルスを拠点に置くテレビ番組の制作会社、LMNO Productionsが、「スローテレビ」の権利を獲得している。2015年に「Slow Road Live」という番組名で12時間のドライブ旅行を生放送する予定だったが、今のところ放送延期になっている。ただ2016年には、何らかの形で「スローテレビ」の番組が放送されるのではないかと噂されている。
このように、ゆっくりだが「スローテレビ」がじわじわと世界に進出している。ノルウェーのように爆発的な大ヒットとなっている国はまだないようだが、「スローテレビ」の可能性はまだ未知数で、これからさらに注目される可能性がある。
「スローテレビ」の魅力が今後どのように受け入れられていくのか、興味深いところだ。
著者プロフィール:
藤井薫(ふじい・かおる)
大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。
『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。
そんな思いをベースに、世界の企業動向や経営哲学をはじめ、それをとりまくカルチャーやトレンドなどを中心にして、思わず誰かに言いたくなるようなネタを提供していくコラムです。
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