ローカル鉄道と地域を支える“寄付ツーリズム”のすすめ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
熊本地震における南阿蘇鉄道の被害が甚大だ。その支援のため、第三セクター鉄道4社が合同で寄付金を募る復興祈念切符を販売している。南阿蘇鉄道も義援金受け入れ口座を開設した。鉄道ファンとしては参加したい。寄付から始まる特別な思いが、大きな満足となる。
復旧義援金に遊び心があってもいい
鉄道ファンから南阿蘇鉄道への支援申し出も多いようで、南阿蘇鉄道が復旧義援金口座を開設した(関連リンク)。「通帳へはご氏名のみの記載でご連絡先が不明となり、大変失礼とは存じますが、御礼申し上げることができませんことをご了承ください」と丁寧なおことわりもある。
その通帳記載の名前だけでも終点の駅に掲示してくれたら、復旧後に掲示を見に行く人も多いと思う。それが利用者増や収入増に結び付くはずだから、落ち着いたら検討してもらいたい。掲示されると知りながら、振り込み名を「ナナシ」、「センバヅルノカワリ」などと匿名(とくめい)にする人がいたらおもしろそうだし、カッコいいし、惚れる。公序良俗に反しない限り、そんな遊び心があっていいと思う。
復旧義援金とは趣旨が異なるとはいえ、広く資金援助を呼び掛けるという意味ではクラウドファンディングと似ている。クラウドファンディングはビジネス色が強く、金額に応じて謝礼品が用意されるため、寄付金付き通販という意味合いもある。しかし私にとっては「現地に自分が参加した証拠がある」ことの方がうれしい。その証拠を見るために現地に赴く気持ちが起きる。
北海道の「711系電車保存プロジェクト」に参加したときは、現地に行き、自分の名前を見つけて誇らしい気持ちになった。失礼ながら交通が不便で、レンタカーを借りたけど、行って良かったと思う。敷地を提供したレストランも美味で、次はレストラン目当てに再訪しようと思っている。同じく北海道の「寝台特急北斗星客車保存プロジェクト」にも参加し、こちらも順調に成立した。そのうちネームプレートを確かめに行くつもりだ。
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