虎退治の加藤清正、猛将よりも知将ぶりをアピールしたい:「真田丸」を100倍楽しむ小話(1/2 ページ)
加藤清正という武将について、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。虎退治などで知られるように勇猛なイメージが強いのでは。けれども実は知的な面も……。
「真田丸」を100倍楽しむ小話
この連載では、歴ドル&信州上田観光大使を務める小日向えりさんとともに、NHKの大河ドラマ「真田丸」に登場する人物、あるいは名シーンなどを取り上げて、よりドラマを楽しめるような情報や小ネタをお伝えしていきます。連載バックナンバーはこちら。
編集部F: 『真田丸』を見ていて思うのですが、つくづく芸が細かいですよね(笑)。歴史ファンの心をくすぐるというか。例えば、先週(4月24日)放送のタイトルが「表裏」ですが、これは豊臣秀吉が真田昌幸を「表裏比興の者」(ずる賢いくわせ者の意)と評したことに由来するものだと思います。けれども、ドラマの中では特にそのような場面があったわけでもなく、個人的には秀吉に表裏があるという様子が描かれていた気がしました。
小日向: あとは茶々の小悪魔ぶりもすごかったですね。次々と家臣に対して色目を使うそぶりとか。
編集部F: そのせいで、真田信繁が加藤清正に井戸へ突き落とされかけましたね……。信繁を軽々と持ち上げて、さすが猛将・清正だなと思いました。
小日向: 清正は豊臣家の中で福島正則とともに武断派(派閥の1つ)のイメージが定着していますが、実は知将としての側面もあるのです。元々は石田三成と同じ文治派だったのです。
編集部F: 何と! まったくそういうイメージはないです。
小日向: それを示すエピソードを1つご紹介しましょう。「二条城の清正」という歌舞伎の演目にもなっています。
1611年、京都の二条城で徳川家康と豊臣秀頼による会見が開かれました。家康としては当然のように豊臣家が邪魔なわけです。恐らく秀頼が会見に応じるのを母・淀君が反対するだろうから、それを反逆の証として一気に滅ぼそうともくろんでいました。
ところが、そうした状況を察して会見に出ることを勧めたのが清正でした。清正の数々の好プレーで、結局その会見は平和裏に終わったわけですが、そこには清正の思いがあったわけです。
豊臣家に対する強い忠誠心というと三成を思い浮かべますが、清正もそれは同じでした。三成と清正はとても仲が悪かったわけですが、お互いに豊臣家への忠誠心は変わりませんでした。ただ、三成はかたくなで、元々豊臣の家臣である徳川が力を付けて偉そうにしているのが気に食わず、それをつぶして豊臣がトップに立つことだけを考えていました。
一方で、清正は政治的なこともよく理解していました。徳川の力を認めて素直に従い、ナンバー2のポジションとして豊臣家は生き延びていくべきだと考えたのです。
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