報道自由度ランキングが「72位」だった、これだけの理由:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
「国境なき記者団」が発表した「報道の自由度ランキング」によると、日本は180カ国中の72位。前年の61位よりもさらにランクダウンした。日本のメディアは自由度がありそうだけれども、なぜ72位なのか。その理由について、筆者の窪田氏が分析したところ……。
メディアの「閉鎖性」が問題
このような傾向は、スウェーデンだけではない。
フランスでは2007年、情報機関の極秘資料を報道したことが機密漏えいに当たるとして『ル・モンド』の記者が拘束され、取り調べで情報源を明らかにするように執拗(しつよう)に求められた。世界中から「やりすぎだ」と非難を浴びたが、翌2008年のランキングでは35位。特定秘密保護法がつい最近ようやくできて、まだどこの誰も拘束されていない日本が72位であることと辻褄(つじつま)が合わない。
米国でも1917年に成立されたスパイ活動取締法で近年バンバン逮捕者を出している。2013年には、「ウィキリークス」に情報を流した陸軍上等兵が禁錮35年の判決を受けていたほか、多くの人がこの法律で厳罰を受けた。が、翌2014年のランキングは46位と、なにをもって「報道の自由がある」としているのかサッパリ分からない。
こういう釈然としない結果から導き出される仮説はひとつ。「国境なき記者団」のランキングというのは、なにかしらの政治的目的を達成したい者、イデオロギーにとらわれた者が深く関与しているのではないかということだ。
ただ、これもしかたがない。以前のコラムでも述べたが、ジャーナリストの本質は「中立公平」ではない(関連記事)。自分たちが考える社会正義に基づいてペンを武器に闘争をする活動家のような側面がある。そういう意味では、「国境なき記者団」は実にジャーナリストらしい調査を行っていると言える。
実際、「国境なき記者団」の2015年の報告書には、福島第一原発にまつわる報道の問題が指摘されているが、そこで示唆されているのは、いわゆる「原子力ムラ」によって制御されたメディア体制の閉鎖性や、記者クラブによるフリーランス記者や外国メディアの排除の構造だ。
実は、これは2002年からこの組織に口すっぱく指摘されている。2002年、26位の順位をつけたとき、ロベール・メナール事務局長は「W杯を取材するために数千人もの外国人記者が日本を訪れている。その日本で外国報道機関の特派員が50年近くにわたり日本の記者クラブの大半から排除されているのは衝撃的なことだ」と指摘している。
また、日本のこれまでの最高順位は2010年の11位。これは「国境なき記者団」の協力者が民主党シンパだったということもあるのかもしれないが、なによりもこの時期に官公庁の記者会見がオープンになったことが大きい。
つまり、「72位」というのは日本の報道環境を客観的に評価したものではなく、特定の政治勢力を攻撃し、日本の報道環境の改革を促すために仕掛けられた「情報操作」である可能性が高いのだ。
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