世界で目の敵にされるイスラム教徒が、なぜロンドン市長になれたのか:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
ロンドンでイスラム教徒の市長が誕生した。市長に選ばれたのは、パキスタン移民2世のサディク・カーン。英国だけでなく欧州の主要都市を見渡しても、いまだかつてイスラム教徒が市長になったことはないのに、なぜ彼は選挙に勝つことができたのか。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
2016年5月7日、英国の首都ロンドンでイスラム教徒の市長が誕生した。このニュースは、英国史上初めての出来事として世界的にも話題になった。
市長に選ばれたのは、パキスタン移民2世のサディク・カーンだ。英国だけでなく欧州の主要都市を見渡しても、いまだかつてイスラム教徒が市長になったことはない。
さらに驚くのは、いまいわゆる「イスラムフォビア(イスラム恐怖症)」、つまりイスラム教に対して偏見に満ちた批判的な見方が欧米を中心に渦巻いている中で、カーンが選挙戦に勝利したことだ。
もちろん「イスラムフォビア」はいまに始まったことではない。ただ特に最近では、多数のシリア難民が欧州に押し寄せたり、フランス、ベルギー、米国ではイスラム過激派によるテロ事件が発生し、多くの欧米諸国で右傾化が指摘されている。また米国では大統領選の共和党指名候補争いで優勢の不動産王ドナルド・トランプ候補が、イスラム教徒の入国を制限するなどと語って物議を醸している。
そんな世界的な風潮の中で、ロンドンではどうしてイスラム教徒が市長になれたのか、と不思議に思う人もいるのではないだろうか。実は市長選は決して接戦だったわけでなく、カーンは予想通りに市長に選ばれたのだ。ロンドンではいったい、何が起きているののか。
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