社員にプロジェクトを押しつけていた失敗から学んだこと:「よなよなエール」流 ガチンコ経営(6/6 ページ)
ヤッホーブルーイングはファンに対してだけでなく社員同士でもガチンコで物事に取り組んでいます。プロジェクトチーム作りもかつては悪戦苦闘の連続でした……。
さて、時は流れ、ヤッホーブルーイングが今どうなっているかというと、私が知らないうちにプロジェクトが誰かの問題提起をきっかけに発足し、課題を解決した後はスパッと解散していくサイクルが完全にでき上がっています。私どころか部門長の承認もとらず部門横断的なプロジェクトは自然発生的に発足し解散していくのです。面白いでしょ!
各課題の解決に当たっては、チームメンバー同士で自律的に協議し皆で判断する。多額の費用が発生する時のみ私に相談がある、こんな感じです。正直、今いくつのプロジェクトが社内で活動しているのか把握していません。恐らく20〜30はあるのではないでしょうか。例えば、「よなよなエール大人の醸造所見学ツアープロジェクト」「樽の仕様変更プロジェクト」「文化浸透のための打ち手プロジェクト」「ネット飲み会の未来を考えるプロジェクト」など。
「フラットに議論できるチームで」「究極の顧客志向を目指し」「自ら考え行動し」「スタッフ同士切磋琢磨し」「仕事の過程や成果を十分に楽しみ」「特技を生かして知的な変わり者のごとく仕事に取り組む」。このような感じでプロジェクトを進めていくのですが、実は上記6つのフレーズは我々の組織文化で定めている行動指針なのです。
つまりは、プロジェクトは我々の組織文化の良い体験の場であり、進めれば進めるほど理想の組織文化が浸透していくというわけです。プロジェクトには入社1、2年目のスタッフも多く参加しているのですが、社外の人に良く言われるのが、「若い人が自律的に本当に楽しそうに仕事をしていますね」ということです。
確かにその通りだと思います。しかも、入社したての若者でも自分の意思でプロジェクトに参加し活躍できるので、他社では中堅社員くらいの経験が、うちでは2〜3年でつくことができると思っています。
このプロジェクト制は、当初一人ではできないような大きな仕事をスピーディに、かつ大きな成果を出すために始めたものでしたが、今では社員が楽しくイキイキと働く組織文化作りの大きな柱の1つに育つという、嬉しい成果も出ています。
著者プロフィール
井手直行(いで なおゆき)
株式会社 ヤッホーブルーイング 代表取締役社長
1967年生まれ。福岡県久留米市出身。国立久留米高専電気工学科卒業。大手電気機器メーカーにコンピュータ周辺機器のエンジニアとして入社。その後、広告代理店等2社で勤務。1997年、ヤッホーブルーイング設立時に創業メンバーとして営業担当で入社。2004年、インターネットショッピングモールの楽天市場担当として一人でネット業務を推進。看板ビール「よなよなエール」を武器に業績をV字回復させた。全国200社以上あるクラフトビールメーカーの中でシェアトップ。現在11年連続増収増益中。2008年より現職。2016年4月に初の著書『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります―くだらないけど面白い戦略で社員もファンもチームになった話』を上梓。
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