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「TRAIN SUITE 四季島」の価格は世界トップクラス、サービス内容は見合っているか?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
JR東日本がクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の運行概要を発表した。同期デビューの「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、運行中の「ななつ星in九州」と合わせて、「クルーズトレイン御三家」が出そろった。お互いにライバル、そして海外の観光列車との競争になる。
北海道新幹線とのすれ違いはあるか
青函トンネル付近のダイヤに、本州行きTRAIN SUITE 四季島のダイヤを重ねてみた。TRAIN SUITE 四季島は新函館北斗〜新青森をゆっくり走るように見えるけれど、このダイヤは実際には無理だ。走行中に後続の「はやぶさ26号」に追い越されるなんてできない。恐らく木古内駅、または奥津軽今別付近の中小国信号場で待機時間があるはずだ。
青函トンネル付近のダイヤに「TRAIN SUITE 四季島」の時刻を載せてみた。細い線が貨物列車、赤が北海道新幹線、緑が「TRAIN SUITE 四季島」。駅間の所要時間が不自然に長く、走行中に後続の新幹線に追い越される。このダイヤでは実際に走れない
その前提で予測してみると、新幹線と貨物列車の合間をすり抜けていくダイヤになった。TRAIN SUITE 四季島は木古内駅で待機中に、はやぶさ26号と貨物列車の通過を待ち、貨物列車を追いかけるように青函トンネルに入る。中小国信号場で30分ほど待機して、貨物列車2本とすれ違う。ただし、木古内駅の待機時間を長くとれば、津軽海峡線のどこかで「はやぶさ19号」とのすれ違いができる。
あのガラス張りの展望ラウンジから、美しいE5系電車とのすれ違いを見る。これは良い演出になる。トンネルばかりの退屈な区間で、かつて駅だった竜飛定点、吉岡定点、そして中間地点の緑のライトは唯一の見物。そこに新幹線とのすれ違いが加われば楽しい。津軽海峡を日中に通過するなら、そのくらいの演出はあるかもしれない。いや、この演出のために、この時間を選んだかもしれない。
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