「宇宙ホテル」や「宇宙実験」、国際宇宙ステーションを起点に急増する民間サービス:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
「宇宙ホテル」や「宇宙旅行」など、国際宇宙ステーションを起点にした民間企業のサービスが盛況だ。その最前線を紹介する。
7人の民間人がISSに滞在、次は日本人か?
今回のテストで改めて注目を浴びているISSだが、Bigelowの取り組み以外にも、実はさまざまなベンチャービジネスを育む場になっている。
民間人に対してISSへの宇宙旅行を提供する企業も存在する。サービスを提供するのは1998年創業の米Space Adventuresだ。同社はさまざまな宇宙旅行プログラムを提供しているが、ISSに関してはロシアのソユーズロケットを活用して飛び立ち、ISSに約10日間滞在するプランだ。
これまでに7人の民間人がISSを訪れた。最初の顧客は2001年に1週間ほど滞在した米国人のデニス・チトー氏だ。また、直近7人目の民間人は、著名なエンターテイメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の創設者であるギー・ラリベルテ氏で、同氏はカナダ人で初めての宇宙旅行客となった。
2015年6月、Space Adventuresは、元電通で広告会社などを経営する高松聡氏と、ISSへの宇宙旅行契約を結んだことを発表した。今後2〜4年以内の打ち上げを計画しているという。訓練の様子などが、同氏のFacebookで公開されているのでぜひご覧になってはどうだろうか。
物資輸送サービスをNASAが購入する
さらに、ISSを舞台に行われる最大事業と言えるのが、イーロン・マスク氏率いる米SpaceXなどが行っている物資輸送サービスだ。先述のBigelowのモジュールもSpaceXによって輸送が行われた。現在、地球からISSへの物資輸送は民間企業に委託されており、その商業サービスをNASAも顧客として購入しているのである。
NASAは、2011年にスペースシャトル計画から撤退した後、宇宙飛行士の輸送はロシアのソユーズ宇宙船に頼り、物資輸送は日本の補給機「こうのとり(HTV)」や欧州補給機ATV、ロシアのプログレス補給船を活用するとともに、米国としての輸送手段を確立すべく「COTS/CRS」というプログラムを進めていた。
その結果として、SpaceXのロケット「Falcon」と補給船「Dragon」、および米Orbital ATKのロケット「Antares」と補給船「Cygnus」がNASAとの間に商業物資輸送契約を結び、サービス提供するに至ったのだ。SpaceXによる最初の物資輸送は2012年5月、スペースシャトル退役後スムーズに移行した点が素晴らしいと思う。
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