ISとアルカイダが合併? 最恐テロ組織が誕生する可能性:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
イスラム原理主義勢力タリバンのリーダーが、米軍の爆撃で死亡した。このニュースは世界中で大きく取り上げられたが、日本ではあまり大きく報じられていない。ただ日本も、テロの脅威に対して、対岸の火事だと片付けるべきではない。なぜなら……。
不満をもつ過激派たちがISに参加
カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」が2015年に製作したドキュメンタリーでは、記者がアフガニスタンに潜伏するIS戦闘員たちへの接触に成功している。ある戦闘員は、もともとパキスタンのイスラム過激派組織「ラシュカレ・トイバ」のメンバーだったが、最近、同組織が活発に動けなくなっているために、アフガニスタンに入りISに加わった。つまり、アフガニスタンやパキスタンでテロ活動が鈍化していることに不満をもつ過激派たちがISに参加しているという。
そしてISはタリバン司令官などをお得意のビデオカメラの前で残酷に殺害しながら、じわじわと存在感を高めている。一方でISの拡大に対抗するために、タリバンはイランに協力を求め始めているとの話も出ている。
このドキュメンタリーの中で、あるタリバン元幹部はこう語っている。「タリバンは『われわれはアフガニスタンの主張する領土で独立するために戦うのであって、ロシアや米国を攻撃したくはない』と言う。だがISは、『われわれは米国を攻撃するし、ほかの地域もどこでも攻撃する。ひとつのイスラム国家、つまりカリフ(イスラム教の開祖であるムハンマドの正統な後継者)の率いるイスラム国家を欲しているのだ』と言っている」
要はタリバンを巻き込みながらその脅威を国外にも広げようとしているのだ。
フランス・パリやベルギー・ブリュッセルで起きたテロ実行犯たちの中にはシリアでISの訓練を受けた後に欧州に戻った者もいた。今後は、シリアやイラクから帰国したような人たちだけでなく、アフガニスタンやパキスタンで訓練を受けて欧米や日本にも入国するISの過激派も出てくる可能性がある。例えばテレサ・メイ英内務大臣は、英国でも800人以上の若いイスラム系英国人がシリアとイラクでISに参加し、そのうちの半分は英国に帰国していると明らかにしているが、今後はアフガニスタンやパキスタンなども注意したほうがよさそうだ。
ただ最近、アフガニスタンで米軍がISを狙った空爆を実施していることもあって、ISの勢いが少し落ちているとの見方もある。それでも脅威であることは変わりなく、警戒しておく必要はある。
関連記事
- 世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか
スクラブ製品が、世界的に注目されているのをご存じだろうか。私たちが何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉などの一部には、いわゆる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチックの粒子が使われている。その粒子が……。 - なぜ大手マスコミは「電通の疑惑」を報じないのか 東京五輪の裏金問題
英・ガーディアン紙が東京五輪の裏金疑惑を報じ、電通の関与を指摘した。しかし、国内の大手マスコミがこの報道を引用する際、きれいさっぱり「電通」をカット。ネット上では「マスコミの配慮がハンパない」といった声が出ているが、真相は……。 - 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - 「最恐の殺人地域」を救うことができるのか 武器は日本の意外な“文化”
「中南米は危険」といった話を聞いたことがあると思うが、私たちが想像している以上に“危険”であるようだ。「世界で最も暴力的な都市2015年」を見ると、上位に中南米の都市がランクイン。こうした状況に対して、日本のある文化が期待されている。それは……。 - フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.