ISとアルカイダが合併? 最恐テロ組織が誕生する可能性:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
イスラム原理主義勢力タリバンのリーダーが、米軍の爆撃で死亡した。このニュースは世界中で大きく取り上げられたが、日本ではあまり大きく報じられていない。ただ日本も、テロの脅威に対して、対岸の火事だと片付けるべきではない。なぜなら……。
ISとアルカイダが手を組む可能性
だが著名なテロ専門家のブルース・ホフマンが最近、今後5年以内にISとアルカイダが少なくとも手を組む可能性があると述べて、話題になっている。ホフマンは「確かに短期的に起きるかどうかは分からないが、両者の関係改善は十分理解できるし、この話題に詳しい諜報機関分析官にその可能性について聞いたところ、両者が手を組むことによる脅威は『米政府と同盟国にとって、明らかに前代未聞の惨事になる』と語っていた」と指摘している。
さらにホフマンは、両者は考え方が異なる部分も少なくないが、それ以上に共通点のほうが大きいと述べている。イスラム法にとって欧米が有害な存在であると見ている点で共通しているし、イスラムによる支配という両グループの究極の目標は同じであるという。
事実、アルカイダのザワヒリは2015年の声明でこんなことを述べている。「ISの言う“国家”の正統性は認めないが、もし私がイラクかシリアにいれば、十字軍や非宗教主義者、そしてシーア派の者たちを殺害するために協力するだろう。なぜなら、国家の正統性よりも、十字軍や非宗教主義者、シーア派を倒すほうが重要だからだ」
また有力な米シンクタンクのランド研究所のブライアン・マイケル・ジェンキンスも2016年3月に、ISとアルカイダは今はライバルで、さまざまな相違点や共通点があるが、今後共に戦う可能性はあると述べている。また、別の米シンクタンク、タハリール中東政策研究所のハッサン・ハッサンは、ISとアルカイダが共闘することはあり得ないと主張しているが、両者を協力させようと発言などをしている著名なジハード(聖戦)信奉者たちがいることも明らかにしている。
いずれにせよ、両者がまた接近することがあれば、ISとアルカイダによる最恐の“テロ軍団”が生まれることになるだろう。
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