中高生をターゲットにした映画『ずっと前から好きでした。』はなぜヒットしたのか(3/4 ページ)
4月23日から公開している映画『ずっと前から好きでした。〜告白実行委員会〜』は、中高生に人気のクリエイターHoneyWorksの楽曲をアニメ映画にしたもの。“中高生に届ける”ことに特化して考えられた本作をヒットさせるために何を意識したのか。アニプレックスの宣伝プロデューサー相川和也さんに聞いた。
”スマホと郊外”に特化したプロモーション
郊外に住む中高生にダイレクトに届けるために活用したのは”スマホ広告”だ。
「中高生はスマートフォンを絶対に持っていると思った。だから、Webの広告の中で、スマホに特化して予算を投入した」
象徴的なのは、作品のWebサイトの閲覧方法。通常のアニメ作品ならスマホとPCの利用比率が半々程度になるが、本作はスマホでの閲覧が95%以上だった。
「95%以上というのは飛びぬけた数字。これを見て、PCでの広告展開にはあまり意味がない、スマホに全力注力だ――とより指針が固まった」
スマホ広告は、ターゲティングを強く意識した。大人が本作の存在を知らないのも当然で、「大人はほとんど『ずっ好き』の広告を見ていないはず。最高でも24歳までしか表示されないようにした」と語る。
「特に、YouTubeの動画広告が非常に効果的だった。基本的に動画広告は途中でスキップされてしまうもの。でもYouTubeにHoneyWorksのファン層が存在していたこともあって、動画広告を最後まで見た人が50%を超えるというのが何件もあった」
地域性も広告戦略に活用した。都心での広告は大きく展開していないが、地方のキー局系列にはテレビCMを出している。また、都内では池袋を起点に郊外へとターゲット層が広がっていたので、池袋と西武線には積極的に展開した。地域性を分析したことで、費用対効果の高い広報活動が可能となったのだ。
中高生にお金を出してもらうために
中高生はそもそも大人のファンと比べて使えるお金が少ない。そんな彼らのために気を付けたことはなんだろうか。
「料金はやはり下げた。映画自体はもともと中高生料金で低いが、劇場前売券は特典付きでも1100円を上限とした。少ないお小遣いの中で、まずは1回見に来てもらうことを目指した」
コアファン層に向けての施策としては、8週連続で来場者特典を変更し“何度も見に来てもらう”ことを狙った。これは多くの劇場アニメで活用されている手法だ。
しかし、実感としては「コアユーザーは来てくれたが、やはり金額的に8回来てもらうのは難しかった。大人の1000円と、中高生の1000円は重さが全然違う」。多くの劇場アニメが“同じ映画を何度も見に来る層”に支えられている一方で、『ずっ好き』は”1回見に来る層”に支えられているのだという。
「驚いたのは、1人で映画を見に行く層がほとんどいないこと。友人と行く、彼氏と行く……思っていた以上に、複数人で行く層が大多数だった。“2人で行くとお得”というキャンペーンなども次回作のときには効果的かもしれない。デートムービーとしても受け入れられていたし、HoneyWorks好きが”布教する”といった見方もあったようだ」
そうしたファンの布教も、“1回見に来る層”の多さの要因かもしれない。
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