なぜロボットはコップを持てないのか(人にはどんな仕事が残るのか)?(2/3 ページ)
Googleが開発した囲碁AI「AlphaGo」が、韓国のプロ棋士イ・セドル氏を破った。ディープラーニングは、すさまじい勢いで進化している。では進化するAIがロボットに搭載された時、ロボットはどこまで人の代わりを務められるのだろうか。
ロボットは無意識に動くことができるか
触覚とは、人の五感の中でもっとも原始的な感覚である。つまり、もっとも長い時間をかけて進化してきた感覚だともいえる。なぜ、早くから触覚が必要だったのか。それは生きのびるためだ。
必要なのは、例えば痛みの感覚である。痛みとは、自分の体に対して何か力を加えられたこと(=危害を加えられたこと)を意味する。指先に押しピンを刺せば、「指先が痛い」と感じる。
けれども、これは実はとても不思議ではないか。押しピンを刺した場所は指先だけれど、痛覚は脳内(感覚野)で発生している。なのに、なぜ指先が痛むように「感じる」のだろうか。しかも、痛みは押しピンを刺すとほぼ同時に襲ってくる。指先で感じている痛みは、そこに注意を向けるよう脳が指示した結果である。痛覚は脳内にあるが、実際に体を傷つけられたのは指先だ。次に同じことをしないように、指先が「痛い」と感じるように脳が指示しているのだろう。
あるいは、煮えたぎった熱湯に手を入れた時のことを考えてみよう。手がお湯に触れた瞬間に、人は手を引っ込める。そして、安全なところに手を引いてから「熱っ!」と声を出す。熱さを感じたのは、手がお湯に触れた瞬間ではなく、手を引き終わってからである。このとき感じた熱さは、次に同じことを繰り返さないように記憶される。こうして生存のために必要な記憶を蓄えていく。
これら脊髄反射的な行動は、小脳で処理される。小脳には神経細胞の8割程度が集まっている。ただし、小脳の神経細胞は、複雑な神経ネットワークを作らない。だから、刺激を受けて(入力)から行動に移す(出力)までの時間が極めて短い。生きのびるためには、こうした瞬間的な反射能力が必要だったのだ。
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