大物IT起業家がハルク・ホーガンを利用してメディアを潰しにかかったワケ:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
今、米国で物議を醸している裁判がある。プロレスラー、ハルク・ホーガンのセックス・スキャンダルをめぐる裁判だ。W不倫の暴露記事をめぐって争われているが、この裁判の裏には“陰謀”があった。それは……。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
今米国で、大きな物議を醸している裁判がある。日本人にも馴染みのあるプロレスラー、ハルク・ホーガンのセックス・スキャンダルをめぐる裁判だ。
ことの発端は、2012年にゴシップ系の米Webメディア『Gawker(ゴーカー)』が、ホーガンが性行為をしている隠し撮りビデオを掲載したことだった。しかも相手はホーガンの友人であるラジオ司会者の妻であり、いわゆる“W不倫”だったこともあって、さまざまなメディアで大きく取り上げられた。今日本で話題のシンガー、ファンキー加藤と、お笑い芸人アンタッチャブル柴田の元妻との不倫騒動を彷彿とさせるような話だが、ビデオがゴーカーに掲載された時点で、ホーガンも友人もそれぞれ妻と離婚していた。
ホーガンは2015年に、ビデオ掲載がプライバシーを侵害するとしてゴーカーを相手取って1億ドルの訴訟を起こした。そして2016年3月、フロリダ州の裁判所で判決が下され、ホーガンが勝訴、ゴーカーは合計1億4000万ドル(約148億円)の賠償を命じられた。
これを受けて6月10日、ゴーカーを運営するゴーカーメディアは米連邦破産法11条を申請し、事実上、経営破たんした。ちなみにゴーカーメディアは『ギズモード』『ライフハッカー」』などいくつものブログ系サイトを運営している。
これがホーガン裁判の大まかな流れだが、実はこの裁判の裏には、セックス・スキャンダルにとどまらない“陰謀”があった。そしてその動きは、インターネットの時代に増えているWeb系などの比較的小規模なメディアだけでなく、一般メディアすら殺してしまいかねない大きな問題をはらんでいるとして米国で問題視されている。
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