大物IT起業家がハルク・ホーガンを利用してメディアを潰しにかかったワケ:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
今、米国で物議を醸している裁判がある。プロレスラー、ハルク・ホーガンのセックス・スキャンダルをめぐる裁判だ。W不倫の暴露記事をめぐって争われているが、この裁判の裏には“陰謀”があった。それは……。
ホーガンが裁判を続けたことに疑問の声
まず少し裁判を振り返る。
ゴーカーは、ホーガンの訴えに対し、次のように自分たちの正当性を述べていた。まずは「表現の自由」だ。米メディアは、米憲法の修正第1条で「ニュース」と考えられる情報を報じる権利が保障されている。有名人の私的な情報もエンターテインメントのニュースとして認識されている。ゴーカーは、ホーガンのビデオも一般市民が関心のある合法的な情報だと主張した。
そしてホーガンが以前より、自らの浮気などプライベートをメディアで切り売りしていたことから、ゴーカーは今回のビデオもその延長だとした。また、もともと30分の長さだったビデオをニュース価値に見合うよう1分42秒に編集し、性行為自体は9秒のみにしたとも主張した。
一方でホーガンは「プライバシー侵害」を主張し、そのビデオが250万回再生され、多くの人の目に触れた「恥ずかしさ」は計り知れないと感情に訴えるような主張した。
両者の言い分は平行線のままだったが、実は2015年に裁判が始まってから、ゴーカー側は何度か示談の提案をしている。ゴーカーが1000万ドルの示談金を申し出たという話もあったようだが、ホーガン側はそうした申し出をすべて断ってきた。
今となってはフロリダ州の裁判で勝利し、1億4000万ドルの賠償を勝ち取っているが、ホーガン側が勝訴するかどうか分からない裁判の時点で、1000万ドルという破格の示談金を却下するのはおかしいとゴーカー側は考えていた。またホーガンが勝訴した後でも、法外であると指摘されている今回の賠償金は裁判官の権限で1億4000万ドルからかなり減らされる可能性があると見られている。さらに、ゴーカーは大方の予想どおり上訴するとしているが、控訴審でホーガンが敗訴する可能性もあり、そうなればそれこそホーガン側は一銭も手に入らない。そういう状況を分かっていながらもホーガンが裁判を続けたことに訝(いぶか)しむ声も上がっていた。
関連記事
- 世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか
スクラブ製品が、世界的に注目されているのをご存じだろうか。私たちが何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉などの一部には、いわゆる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチックの粒子が使われている。その粒子が……。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……? - 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - 「最恐の殺人地域」を救うことができるのか 武器は日本の意外な“文化”
「中南米は危険」といった話を聞いたことがあると思うが、私たちが想像している以上に“危険”であるようだ。「世界で最も暴力的な都市2015年」を見ると、上位に中南米の都市がランクイン。こうした状況に対して、日本のある文化が期待されている。それは……。 - フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.