ド派手な「火星探査」や「再利用ロケット」の裏でばく進するSpaceXのビジネス:宇宙ビジネスの新潮流(4/4 ページ)
米SpaceXは2018年に火星無人探査を行うこと、計画が順調に進んだ場合に、早ければ2024年に火星に有人宇宙船を送り込むことを発表した。再利用ロケットなど派手なプロジェクトが目立つが、ビジネス面でも着実な進ちょくを見せている。
有人輸送サービスや火星探査への進出
そして現在、SpaceXが狙っている市場は2つある。1つはISSへの宇宙飛行士の輸送サービスだ。2010年以降、NASAは前述したCOTSプログラムの有人輸送版とも言える、CCDeVと呼ばれるプログラムを進めており、民間企業による有人輸送サービス実現のための宇宙船の開発を進めてきている。
現在は第5フェーズまで進んでおり、パートナーとして残っているのがSpaceXと米Boeingの2社だ。現在進行中のCCtCapプログラムでは2017年にはISSへの有人飛行実証を行うことになっており、その開発契約などは約2600百万ドルに及ぶ。無事に開発が進めば、定期的な宇宙飛行士輸送サービス契約を結ぶことになり、巨額の受注が見込まれる。
もう1つ進めているのが冒頭に紹介した2018年以降の火星探査ミッションだ。火星探査ミッションは火星と地球の位置関係から26カ月に一度しかチャンスがやってこない。イーロン・マスク氏は2018年の打ち上げ機会から2年ごとに無人ミッションを行い、早ければ2024年に有人ミッションを行いたいという。本プロジェクトには同じく火星探査を目標としているNASAも技術支援を行う予定だ。
衛星インターネットサービスはトーンダウンか?
飛ぶ鳥を落とす勢いのSpaceXだが、すべてが順調に推移しているわけではない。2015年1月に構想をぶち上げた衛星インターネット網の計画に関しては、シアトルにオフィスなどを構えたものの、同年10月にはショットウェル社長が「ComcastやTime Warnerなどの既存プレイヤーに勝てるだけの低コストで実現できる技術見通しが立っていない。ビジネスケースが不透明」と語るなど、トーンダウンした発言もしている。
さまざまな取り組みを進めるイーロン・マスク氏とSpaceX、今年後半には火星ミッションの詳細発表、再利用ロケットによる初の打ち上げも予定されている。宇宙業界の枠を超え、全世界から注目を集める風雲児の動向に今後も目が離せそうにない。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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